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戦国異伝供書
第九十一話 会心の夜襲その四

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「よいな」
「はい、それでは」
「そうします」
「退きましょう」
「ではな」
 こう言ってだった。
 元就は本陣を攻めさせ続けていたがそれでも義隆はあえて見逃す様にした、そして大内の軍勢の偽の情報を流し。
 そしてだった、さらにだった。
 安芸の国人達にも忍の者達を送って知らせた。
「既にです」
「大内家の本陣をか」
「毛利殿は攻められたか」
「そしてか」
「大内家を乱した」
「左様か」
「はい、そしてです」
 使者に来た忍の者は国人達にさらに話した。
「今大内の軍勢は乱れていますので」
「ここでか」
「我等も攻めよ」
「その様にじゃな」
「毛利殿が言われておるのじゃな」
「左様です、ですから」
 是非にというのだ。
「ここは」
「毛利殿に誓った通りじゃ」
「この度は毛利殿のご命令に従う」
「そのうえで戦う」
「そして攻める」
「宜しくお願いします」
 忍の者は国人達に話した、そしてだった。
 忍の者は姿を消した、国人達はその後で話した。
「では攻めるが」
「まことに夜襲を成功させるとはな」
「しかももう使者を送ってこられるとは」
「毛利殿恐るべしじゃな」
「全くじゃ」
「この策まるで軍神の如きじゃ」
 元就についてこう言うのだった。
「実に凄い方じゃ」
「これだけの方が安芸におられるとは」
「これから毛利殿にどうすべきか」
「考えねばな」
「そしてじゃ」
 国人達はあらためて言った。
「今はな」
「攻めようぞ」
「毛利殿の言われる通り」
「まさに攻め時じゃ」
「是非攻めようぞ」
 こう話してだ、そしてだった。
 安芸の国人達の元就の言うまま正面から攻めた、数は少なかったが浮足立っている大内家の軍勢は為す術がなかった。
 一方的に攻められる、それで陶は二陣の中で言った。
「これはいかん」
「はい、既に殿は討たれたともです」
「その様にも言われています」
「果たしてどうなったか」
「ご無事ならいいですが」
「うむ、最早この状況ではじゃ」
 どうかとだ、陶は言った。
「戦えぬ」
「では」
「ここはどうされますか」
「一体」
「どの様にされますか」
「この度は」
「退くしかない」 
 陶は苦い顔でこの言葉を出した。
「本陣を奇襲されよからぬ噂が軍全体に飛び交っておる」
「それではですな」
「この度は、ですな」
「ここで退きますか」
「そうしますか」
「ここで退けば負けるにしても」
 それは嫌なものであるがというのだ。
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