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戦国異伝供書
第九十一話 会心の夜襲その三

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「よいな」
「それでは」
「そのことを踏まえて思う存分暴れよ」
 元網にこうも告げてだ、そしてだった。
 元就はその彼と共に山を一気に駆け下りた、その後に兵達も続く。法螺貝を鳴らし鬨の声をあげて山を下ると。
 すぐにだ、大内家の軍勢は大慌てとなった。
「な、何じゃ!?」
「敵襲か!?」
「安芸の者達か!?」
「敵が来たのか!?」
「まさか!」
 彼等は右に左に動くばかりで何も出来ない、そこに元就はしきりに攻めよと言う、そうしてだった。
 大内家の者達は次々と討たれる、大内家の兵達はそれを見て言った。
「殿をお護りせよ!」
「何とかせよ!」
「殿だけは討たれるな!」
「何としても殿をお護りせよ!」
 こう言って護ろうとする、それでだった。
 彼等は何が起こったのかわからない義隆の周りに集まった、そのうえで自分達の主に対して言った。
「殿、こちらに」
「こちらにいらして下さい」
「我等がお護りします」
「ですからこちらに」
「頼む」
 初陣でしかも戦に向いていないと自分でも思っているのか義隆は彼等の言葉に頷き下がっていく。元就はその一団を見て兵達に言った。
「あの者達は攻めるな」
「徐々に兵が集まっていますが」
「それでもですな」
「ここは、ですな」
「攻めてはいけませんな」
「左様ですな」
「うむ、ここはじゃ」
 まさにとだ、元就は彼等に命じた。
「攻めるな」
「わかり申した」
「その様にします」
「それでは他の兵達をですな」
「攻めていきますな」
「そうせよ、ただ深追いはするな」
 このことも言うのだった。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「その様にします」
 碧の衣と具足の兵達は元就の言葉に頷いてだった、彼の采配の下的確に動き敵兵達に刀を振るい槍を突き出した、そうして。
 毛利家の本陣を散々に乱した、そこで元就は自分の傍にいる忍の者達に告げた。
「ではな」
「はい、それではですな」
「この度ですな」
「我等は大内家の軍勢の中を動き回り」
「そうしてですな」
「流言を撒くのじゃ」
 その様にしろと命じた。
「よいな」
「大内殿が倒れた」
「討ち取られたと」
「そうした噂をですな」
「流すのですな」
「そうせよ、よいな」
 こう命じるのだった。
「お主達は」
「はい、それでは」
「そのさまにします」
「ではです」
「すぐに行きます」
 忍の者達も頷いてそうしてだった。
 彼等はすぐに飛んだ、それでだった。
 元就は彼等を見送ってから兵達に告げた。
「これ位でよい」
「はい、それでは」
「退くのですな」
「そうするのですな」
「そうせよ」
 こう言うのだった。
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