暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第35話:変わる味
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に仕舞って彼女に声をかけた。

「よぉ、もういいのか?」
「あぁ、あとは2人だけで大丈夫だよ」

 奏が満足そうに頷くと、颯人の隣に腰掛けた。颯人は彼女が隣に座ると、当たり前の様に魔法で缶ジュースを取り出し彼女に差し出した。

「飲むか?」
「ん、ありがと」

 缶ジュースを受け取った奏だが、蓋は開けず手の中の缶をじっと見つめる。何かを言おうとして考えている様子の奏に気付いた颯人だが、彼は何も訊ねず彼女が口を開くのをじっと待っていた。

 たっぷり二分ほど時間を掛けて、考えが纏まったらしい奏は口を開いた。

「颯人から見てさ……響ってどう?」

 奏の問い掛けに颯人は顎を指で叩きながら少し考え、ややあってから答えを口にした。

「ん〜、そうだな…………ちと危なっかしい感じはあるな」

 颯人の答えに奏は、そうかと呟き缶の蓋を開けて中身を口に流し込んだ。中身はただのオレンジジュースの筈だが、何故か奏の舌は苦味を感じていた。

 浮かない表情をする奏を横目で見つつ、颯人は話を続けた。

「誰かを助ける為に、我が身を顧みず必死になる。奏や翼ちゃんが心配するのも、分かるよ」

 しかし、である。颯人に言わせればそれはある意味で無用の心配であった。

「だけどさ、響ちゃんには帰りを待ってる子が居るだろ?」
「あ……えっと、小日向……未来だっけ?」

 奏の答えに颯人は満足そうに頷くと、魔法で自分の分の缶ジュースを取り出し一口飲む。奏と同じオレンジジュースだが、彼は微塵も苦味を感じず爽やかな甘さと酸味を楽しんだ。

「彼女は響ちゃんにとっての帰る場所なんだろうな。そう言う子が居るなら、その子が響ちゃんの最後のブレーキになってくれる。どこかで必ず、響ちゃんを踏み止まらせてくれるだろうさ」

 颯人の言葉は、すとんと奏の胸に収まった。

 実は響の在り方にはある一点を除いて、奏は既視感を感じていたのだ。
 颯人である。自身に足りないところがあろうとも誰かを助けようとする響の在り方は、奏を助けようとする颯人と非常に似通っていたのだ。響との違いは、見ず知らずの不特定多数に平等に向けられているか、奏と言う明確に守りたい相手が居るかである。

 前々から奏の為に無茶をする颯人の在り方に肝を冷やし続けてきた奏。
 しかし、今の颯人の話を聞いて少し安心できた。響にとって未来と言う少女が最後のブレーキになるのなら、颯人にとっては──────自分が最後のブレーキになるのではないか? と奏は考えたのだ。

──そう思っちゃうのは、自惚れかな──

 一度意識し始めると好奇心が抑えきれなくなった。

「颯人は……」
「ん?」
「颯人は、さ…………アタシが待ってるって言ったら、どこかで思い留まったり
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