暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第35話:変わる味
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は暗に、この事で翼を馬鹿にする気も何も無いという事の意思表示であった。

 それはそれで、響は勿論翼にとっても意外な事であった。

「颯人さんだったら絶対この事で翼さんを揶揄うと思ってました」
「正直、私も。まさか何も言わずにいなくなるとは」

 2人がその事で疑問を抱き揃って首を傾げると、奏が堪らず苦笑を漏らした。流石颯人、もう既に2人から変な意味での信頼を得てしまっている、と。

「意外かもしれないけどね、あぁ見えて颯人も結構気遣いできるんだよ」

 しかも他人の感情の機微なんかには、こちらが思っている以上に敏感なのだ。それを良い事にも悪い事にも活用してくるのが、玉に瑕ではあるが…………。

 等と考えながら、奏は翼の散らかった肌着や衣服を畳みながらチラリと翼と響の様子を伺う。
 見れば響は翼に今まで以上に気軽に話しかけている。翼のだらしない一面に、最後の壁が無くなったようだ。

──頃合いだね──

 内心でほくそ笑むと、奏は席を外すべく立ち上がった。

「そんじゃ、アタシはそろそろ先行くよ」
「え、奏さん?」
「奏?」
「いい加減一人にしとくと、颯人が何仕出かすか分かったもんじゃないからさ。じゃ〜ね〜」

 突然立ち去ろうとし始めた奏に、困惑の表情を向ける響と翼。
 去り際、ドアから出る直前に奏は病室内に視線を向けると、翼にだけ意味深な視線を向けウィンクしてみせた。

 勝手知ったると言うか、それだけで翼は奏の言いたい事を理解した。

──後は任せたよ、翼──
──分かった、任せて──

 翼には──奏にもだが──前々から響に訊ねておきたいことがあった。

 響は奏と違って力を求める理由も無く、また翼の様に力を持ち国を護る者として教育を受けてきた訳でもない。偶然力を得てしまっただけなのだ。
 そんな彼女が何故ここまで命を懸けて戦うのか?

 疑問に思ってはいたのだが、響が二課の協力者となってからこっち颯人の帰還にクリスと透の出現、翼の入院に加えてジェネシスの襲撃などがあった所為でなかなかその機会に恵まれなかったのだ。

 そんな中でこれだ。翼が抜けていた間、奏と颯人に引っ張られながらも響は良く付いてきてくれていた。その事を評価するついでに、翼にその事を訊ねてもらおうと奏は画策したのである。

 にこやかに、且つクールに病室を出た奏。

 病室から出ると、少し離れた所に颯人がベンチに座って彼女を待っていた。ポータブルのオーディオプレイヤーで音楽を聴きながら、手の中のルービックキューブを一瞬手を翳しただけで色を揃えたり模様を作ったりしている。

 と、颯人が病室から出てきた奏に気付いた。彼女と目が合うと、颯人はルービックキューブを一瞬で消しオーディオプレイヤーを懐
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