怪盗乱麻、リゾートの闇を断つ
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ために彼を利用しただけだもの。わたしが知りたいのは、『緋蒼の石』がどんな綺麗な宝石なのかだけ」
知ってる。本当はキュービとサフィールが姉弟ではないことを。その上で、キュービは何者かわからないサフィールが一人で生きていけるよう経済的な支援をしたりサーナイトを保護者代わりにつけていることを。
それでもサフィールにとって家族はキュービしかいない。家族と会って話がしたいって気持ちは、他人が否定していいことじゃない。
キュービの部屋の中であの二人がどんな会話をしているのか、できているのかはわからなくても。彼の目的は果たせてる……そう信じるしかない。
わたしのやるべき事は、怪盗として目の前の宝を奪うこと。
「マーシャドー、ジャラランガ! 出番です。あの小癪な鎧を破壊しなさい!」
「させない! スターミー、シルヴァディ!」
「くっ……!」
チュニンがカードからポケモンを呼び出すのに合わせてわたしもボールから同じ数を出す。
お互いに指示を出して普通にポケモンバトルをするのは、チュニンにとってデメリットしかないはずだ。彼女にとっては、一刻を争うのだから。
砕けた拳を、なおもチュニンは握りしめる。まだ攻撃しないといけないか、とわたしがツンデツンデの銃を構える。
「……『緋蒼の石』を渡せば、そこを通してくれますか」
彼女は、チャイナドレスのスリットから紅と蒼で分かれたコインのような宝石を取り出す。キュービが見せた物と違って、宝石自体が淡く光を持っていた。
あれが本物の宝石なんだ。
「残念だけど、サフィールが納得して部屋から出てくるまでは宝を手に入れたってここからどかない。それが彼との約束だから」
わたしは宝を盗む、彼はキュービと一対一で話をする。そのための協力だ。自分の目的だけ果たしてさよならなんてできない。
チュニンが砕けた拳を強く握る。痛みに耐えているのか、よっぽどサフィールがキュービといるのが嫌なのか、表情も蒼白だ。
「……すみません、キュービ。あなたとの約束、守れませんでした」
負けを認めて、宝石を渡してくれるのかと一瞬思った。だけど、チュニンの顔は、悲しい決意に満ちている。思わず、銃となったツンデツンデをチュニンに向けた。
「チュニンは、他のシャトレーヌやあなたのように人前で戦えるような人間ではないんです。ただ、貴女は他人を傷つけなくても生きていけると教えてくれたキュービのために、お客さんの相手を務めてきました。あなたとの怪盗ごっこにも付き合うつもりでした」
「怪盗ごっこ……やっぱりそんな風に思ってたのね」
「ですが、キュービを守れないなら。こんな茶番等意味がありません」
マーシャドーの影が伸び、チュニンの体を覆っていく。煌めく炎のような赤い髪が、錆び
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