この素晴らしき大道芸に拍手を!
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響が言葉に詰まっていた。
ハルトはコホンと咳払いをして、
「それでは皆さん! カウントダウンをお願いします! 5!」
『4!』
ノリのいい観客たちは、一斉にコールをし出す。
『3!』
「おお、おい! 本当に爆発すんのかよ? 嫌だ! 童貞のまま死にたくない!」
『2!』
「カズマさん! 私、カズマさんが死んだらお祈りしてあげる! 綺麗で麗しい女神様に出会って、せいぜい勇者として異世界に召喚されていいパーティーですごい生活を送れますようにって!」
『1!』
「さあさあ皆さん、刮目ください!」
盛り上がってきた観客へ、ハルトは指をパッチンと鳴らす。
「いざ! エクスプロージョン!」
ハルトの掛け声とともに、カズマが入っていた箱が粉々の大爆発を起こした。
カラフルな煙の後ろに本物の衝撃。その後には何も残らなかった。
台の上に残った焦げ跡で、沸き上がったのは拍手喝采。
「すごい! すごい!」
「本当に爆発した!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
ハルトは両手を上げて、その声に応える。
「そしてその拍手をもう一度? 今度は私にではなく、体を張って私のアシスタントをしていただいた、少年にお願いいたします!」
ハルトはそう言って、観客たちの奥を指差した。
そこには、髪をぼさぼさにして、息も絶え絶えになっているカズマがいた。
「ゼエ、ハア、ゼエ、ハア、死ぬかと思った……」
カズマは肩で呼吸しながら、ハルトを恨めしそうに睨む。
彼の無事を確認した観客たちは、再び地響きにもなりそうな拍手をした。
「ま、まあ。勝負は引き分けってところね」
自称女神___名前はアクアというらしい___は、自身の缶とハルトの缶を見比べながら結論付けた。
「おいアクア。二人とも確かに容器は一杯。お前の言い分は、まあ分からなくはない」
カズマがジト目でアクアへ横やりを入れる。だがアクアは全く意に介した様子はない。
カズマは続ける。
「でもな? お前の缶は小さい。この前俺が飲んだ空き缶だからな。でも、ハルトが使っているのは菓子箱。お前のやつよりおおい」
「カズマさん。よく見てみなさいな。もしかして、硬貨の数え方も忘れちゃったの? プークスクス!」
「お前こそよく見ろよ! 十円玉が多いのはお互い様だけど、ハルトのやつにはところどころお札入っているだろうが! 普通にお前の負けだよ!」
「何よカズマ! 何もなく受け入れるの? そんなんだから、私たちはいつまでたっても売れないのよ!」
「俺は別に売るつもりはない。今のアパートで永遠に暮らすんだい」
「このヒキニート!」
「あの……」
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