第1部
アッサラーム〜イシス
眠らない町
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他愛のない話を続けていると、家にいた頃を思い出す。ルカも同じなのか、話している間、自分でもきづかないうちに私の呼び方が家にいた頃に戻っていた。
そして、ふと辺りを見回すと、気づけばすっかり薄暗くなっていた。
「うわ、もうこんな時間?! ごめん。仕事中なのにずっと話し込んじゃったよ」
「おれの方は大丈夫だから、用事があるなら行きなよ」
「それじゃ、また明日ね!」
「ああ、また明日な、姉ちゃん」
そう言ってお互い挨拶を交わし、私はルカと別れた。気づけば、ルカに会う前よりも幾分心が軽くなったような気がした。
「え、まだ帰ってきてないんですか?」
ドリスさんの店でルカと別れ、そのあと一度宿に戻ってみると、意外にもシーラが先に待っていた。約束通り二人で大衆浴場に足を運び、周囲に怪しい人物の気配がないか念のため確認したあと、幾日かぶりのお風呂にゆっくりと浸かることができた。
もともとこの街は水場が少ないのだが、地理的には一年を通して暑い気候が続くため、わざわざ北東の山の向こうから水を引いているらしい。なんでもこの街の近くに、その水を引く仕事を請け負ったホビット族がいるんだとか。
とにかくその人のおかげでこうしてお風呂に入ることができたのだ。ありがたい話である。
そんな上機嫌な中、再び戻って宿屋の主人に聞いてみると、男性陣が未だに戻ってきていないことが判明した。
ナギはともかくユウリまで帰ってこないなんて、珍しい。なぜなら今は、他の町ならとっくにベッドの中にいる時間なのだから。
当然お店はとっくに閉まってると思いきや、シーラ曰く、この街は夜からが稼ぎ時なんだそうだ。なので夜遅くまでやっている道具屋さんも結構いるらしい。
アルヴィスさんのところに行くと言っていたが、ずいぶんと時間がかかっている。何かあったんだろうか。
仕方なく私とシーラは部屋に戻り、明日の支度と就寝の準備を始めることにした。
「この街にいるとさ、時間の感覚がマヒしちゃうよね」
苦笑しながら話すシーラ。確かにここは暗くなってもそこかしこが明るくて、家路につく人々はそれほど多くない。常に明かりがついてたり音楽が流れていたりするので、いつ陽が沈んだのかも気づかないのだ。
「それでもあたしは、夜でも賑やかなこの街が好きなんだけどね」
そう言ったときのシーラの雰囲気が、まるで自分に言い聞かせているような気がした。
すると、隣の部屋の扉が開く音が聞こえた。いつものように二部屋取ってあり、音のする場所はユウリとナギの部屋である。私たちはすぐさま隣の部屋に向かった。
「あっ、ユウリちゃんだ! おかえり!」
シーラが声をかけた
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