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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
エピローグ
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知らない彼女の現地の部下たちのことを思い、そっと心の中で合掌する。風にたなびき上空へとゆらゆら上がっていく紫煙を眺めつつ、鼓がまた口を開く。

「本当は、お前以外にもちゃんと挨拶していきたかったんだがな」
「そういうとこ真面目だよなあ。ま、あの2人にはアタシから伝えておくさ」
「ああ、頼む。わかりやすく怪我したのは遊野の方だが、八卦ちゃんの方は心に傷を負った可能性もあるからな」

 あの後、清明は蛇ノ目戦での火傷が原因で即入院、現在も病院にぶち込まれている。とはいえ糸巻の見立てによれば怪我自体は異様な、明らかに人間離れしたスピードで既に完治しており、ただ本人がぐーたらしていたいから未だに退院していないようにしか見えないのだが。とはいえ、それは清明の話。八卦ちゃんの方は表面上は問題なく見えたが、そのメンタルに気を配る必要があるのは間違いない……そこまで考えたところで、顔色一つ変えずに言葉が続く。

「お前の場合性格が性格だからそのあたりの機微に反応できるとは私としても欠片も全くそれはもう全然頭のてっぺんから足のつま先までこれっぽっちも期待してはいないが、せめてお前なりにでいいから多少は気を使ってやるんだぞ」
「よし、その喧嘩買った!いっつもアタシのことどういう目で見てるかよく分かったぞ」

 澄ました顔のまま一息で言い切った鼓に、拳を握って半腰となり向き直る糸巻。険悪な2人の視線が交錯すること数秒、同時にその力が抜けた。2人して小さく笑いながら、ベンチにどさりと体を預け直す。

「……まあ、なんだ。向こうに戻ってもしっかりやれよ、フランス支部長殿」
「お前こそ、私がいないと夜な夜な枕を涙で濡らさないようにな」

 糸巻が何か言い返すより先に弾みをつけて立ち上がり、吸殻を灰皿にねじ込んで足元のトランクを握り直す鼓。時計の針は、もうすぐ空港行きの電車が到着することを示していた。

「またな、糸巻」
「おう、鼓」

 長々とした別れの挨拶や飾った言葉は必要ない、そういうものだった。差し出された手を一度だけぐっと握り、その手が離れると同時に笑みを浮かべて銀色のゆる三つ編みを揺らして身を翻す。
 それっきり振り返らずに改札を通り、電車の中に消え、ドアが閉まり、そしてゆっくりと離れていく様子を、糸巻は最後まで目を逸らさずに眺めていた。

「……はぁ」

 ゆっくりと息を吐き、その場でぐっと背伸びする。必然的にただでさえ目立つ2つの膨らみが強調されるが、どうせ誰かが見ているわけでもないし、もし見ていたとしてもそう気にはしない。そんなことよりも彼女の心中は、先ほどの会話が占めていた。
 別れの言葉の中で、意図的に出さなかったのであろう名前、鳥居浄瑠。あの一瞬の邂逅の後、彼はまた音信不通となって現在もその行方は知れず、不気味
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