第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十九話 虎の川を越え、城より出でて
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へと向けられるではないか!
予備として保持していた混成大隊を五州大橋に投入したかれは主力を抽出、渡河点への強襲に赴いた。
虎背川の渡河点の防衛に張り付いていた部隊の一部と、フリッツラーの精強な重猟兵師団の第三旅団を合わせ、その数はおおよそ一万余。
上泊と葦川を結ぶ街道は血濡れの戦闘へともつれ込みつつあった。
さて、余談ではあるがこの六芒郭支援作戦は噴龍弾が〈皇国〉軍においてはじめて大規模な軍事利用された戦いである。(というよりも〈皇国〉軍の国家間戦争自体24年ぶりなのであるが)匪賊との戦闘において効率化が叫ばれていたが逆説的な言葉遊びをするのであれば効率化を徹底するべき時期にあった事で大規模な効率的な新兵器の導入は行われなかった。
この数日間で試された噴龍弾の大規模運用とそれまでの訓練により、今までまともな戦場で扱われてこなかったこの兵器が初めて戦場の主役となった奇妙な日となった。
護州軍の事実上の指揮官であった守原定康と豊地大佐が英明であったというわけではない。
噴龍弾は兵器として新開発されたものであるが似たようなものはこれまで民草の間で扱われていた。更に言えば大陸の方では南冥などでは王朝が何度か変わる前から――それこそ銃砲の時代が訪れる前から幾度か(王朝に収入と安定した資源供給ができる時期に)歴史に顔を出した兵器である。
しかし、最初に注目した水軍の間でも兵器としてみなしておらず、難破事故の処理や、嵐の後などに流木や土砂を吹き飛ばす為に解体屋や土木屋から借り受けたものを使用したことがあるものが古株の者に数名いたくらいである。動かないものを金をかけずに吹き飛ばすために使っていたものを殺し合いに使えば同じように金もかからないだろう、と思いつき、密理学者達が面白がって食いついたのが数年前のことである。
そして弱点ははっきりと露呈した、まず第一に三百間から動きが怪しくなり、半里を超えるとどこに向かうかわからないこと、第二に密集して運用すると相互に干渉してただでさえ低い着弾制度がさらに低下すること…そして土塁や砲撃を想定した建造物に対しては著しく効果が劣ること。
多数の欠点はあったが魅力もあったまず第一に軽いことだ。
発射筒は十数貫程度、取り回しの良さで言えば軽臼砲にも勝る。第二に砲と比較してかさばらない事、第三に爆砕、焼夷能力が高い事。
軍隊とは運搬能力の限界と戦う組織である。その中でこの利点を見逃す事はできない。
ましてやこのあとの戦で内地の南北を貫く山嶺を細かく縫う側道防衛に頭を悩ませるとあればなおさらである。
砲兵、工兵や河川艦の武装として噴龍弾は多くの文句を言われつつも一定期間使われることになった。
真っ当な会戦では脇役の域を出ない兵器であったが、ちょっとした川の防衛で〈帝国〉を悩ませるに
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