第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十九話 虎の川を越え、城より出でて
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ある船が半数を占めているが。
「過度に期待されるのはご遠慮願いますが、幾らか新しい事を試すつもりです」
しかしながら仮設艦といっても平時には虎城の山中から材木やらなにやらアレコレと運んでいた船である。材木と同じように物騒な物を積み込むことができるが、軍事用ではなくそうした類の荒事の為に作られた船ではない。
そもそも河川艦の積載量では砲火力も 防衛支援に繰り出す分には十分であるが単独戦力としてはひどく頼りない中途半端な船だ。 正規の軍船ですら尉官が指揮する程度の物といえば察しがつくだろう。
「水軍の運用についてはお任せする」
西州軍は水軍とのむすびつきを急速に強めていた。何しろ彼らの兵站の少なからぬ面を水軍と東州に依拠することになっているのだから当然ともいえるが、皇都においてその工作を担っているのは西州公・西原信英とその息子である信置の二人が公然と影響力を振るっていた。
そしてそれに対する財政的な援助を兵部卿である安東吉光は公然と自身の権力を行使して後押ししていた。
そもそも虎城の山の麓と海原の間を縫う五州街道は重要だがけして楽な道ではない。引けば幾らでも防衛に適した地点はある。それでもなぜ葦川に固執しているのかというと、安東家の意向を受けた兵部省の後押しがあるからだ、なにしろ東州灘を挟んだ先にあるのは安東家の本拠地東州である以上当然だろう。
それが単なる無駄な派閥抗争の為かといえばけしてそうではない。葦川は良港で東海艦隊の根拠地の一つであり、そうである以上は林業、鉱業、そして工業が盛んな戦略資源の生産地である東州と内地を結ぶ上で大いに意義がある。
西原信英は諸将時代末期の五将家党首であった。即ち陸軍軍人ではなく、いわゆる軍閥貴族の首魁としての視点を持ち合わせていた。
彼は安東家の内部でも中央官閥と東州派閥で意見が分かれている事を見抜いていた。
西原信英は狷介である。駒州が強くなりすぎても守原が強くなりすぎても困る。安東家が割れているのであれば片方に肩入れして親西原としてとりまとめさせる方が良い、と根回しを開始をしたのだ。
性質が悪いのが西原信英の動きは利益の配分を基本とする事だ。困ったときに貸してまわりながらあとで取り立てに来るのがこの老人の動きである。
もし集成第三軍がさんざんに追撃を受けていればこのような選択肢を取らなかったであろうが、重火器の損失はともかく人員としてはさほどの被害を受けていなかった――その被害は龍口湾で集中爆撃と騎兵師団の突撃を受けた集成第二軍と泉川で遅滞籠城戦を試みて包囲殲滅寸前にまで追い込まれた龍州軍に集中しているのだが。
陸水双方の負担軽減を名目にしている以上、守原も駒城も横車を入れることはできなかった。
駒城家にとっても東州灘が怪しくなれば自身の港が怪しくなる以
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