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戦国異伝供書
第九十話 尼子家の謀その十

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「誓って頂きたいことがあり申す」
「というと」
「それは何でござろうか」
「一体」
「この度の戦、総大将はそれがしです」
 元就は自分からこのことを言った。
「そのことを承知して頂きたい」
「はい、それは」
「無論です」
「毛利殿が我等を呼ばれたのですから」
「それなら」
「ならです、若しそれがしの命に背けば」
 その時はとだ、元就は強い口調でさらに言った。
「それがしに切られることも」
「そ、そのこともですか」
「我等にですか」
「誓えと言われますか」
「左様」
 国人達に答えた。
「そうでござる、若し誓えぬのであれば」
「その時は」
「どうせよと」
「今ここから去られよ」
 そうせよというのだ。
「それがしは今もその後も何も言いませぬ」
「誓えぬから去ろうとも」
「それでもでござるか」
「毛利殿は言われませぬか」
「咎めも責を問いも」
 そうしたこともというのだ。
「一切」
「左様でござるか」
「ここで誓えぬなら」
「この戦で毛利殿の命に従えぬのなら」
「それならば」
「この場から去られよ、軍勢も」 
 彼等が率いるそちらもというのだ。
「退かれよ」
「そのことを今ここで決める」
「誓うか去るか」
「どちらかですな」
「どちらにされるか」
 元就は国人達に真剣な顔で問うた、すると。
 国人達は元就の前に集まりそこに座して言った。
「わかり申した」
「誓いましょうぞ」
「この戦毛利殿の命に従いまする」
「逆らうことはしませぬ」
「そのことを誓いまする」
「誓って頂けるか、なら」
 それならとだ、また言う元就だった。
「これより戦の場に向かいましょうぞ」
「わかり申した」
「それではです」
「今よりです」
「敵の軍勢に向かいますな」
「そうしましょうぞ」
 国人達に答えてだ、元就は彼等を率いて軍勢を率いてそうして大内家の軍勢に向かった。その中で。
 元就は元網にこう言った。
「よいか、お主もな」
「血気をですか」
「今は抑えよ」
「戦になるまでは」
「左様、逸る気持ちを抑えて」
 そしてというのだ。
「わしと共に行ってもらう」
「大内家の軍勢まで」
「大内家は安芸には詳しくない」
「地の利がない」
「大内家についている安芸の国人達もおるが」
 彼等は安芸のことを知っているがというのだ、その地の利も。
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