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戦国異伝供書
第九十話 尼子家の謀その七

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「だからな」
「平家の様にですか」
「なりたい」
「源氏の様にではなく」
「あの家の末路を見るとな」
「身内で殺し合い結局は」
 志道もやはり知っている、このことはよく知られていて彼も知らない筈がないことであるからである。
「誰もいなくなりました」
「血が絶えたな」
「完全に」
「そうじゃ、鎌倉殿は木曾殿も九郎判官殿も殺した」
「そのお父上の代から」
「むしろ平家と争うよりもじゃ」
「それより先に、でしたな」
「互いに殺し合ってな」
 そうしてというのだ。
「その結果じゃ」
「ですな、ですから」
「あの家の様になってはな」
「ならないので」
「むしろ平家じゃ」
 自分達の血筋を考えれば敵であるこの家の方がというのだ。
「まさにな」
「家は常にまとまっている」
「毛利家も主従もな」
「そうした家であるべきですな」
「入道殿はむしろ手本にしたい程じゃ」
 平清盛、その彼はというのだ。
「ああした御仁になりたい」
「では」
「うむ、そのことを念頭に置きつつな」
「ことをしていきますな」
「そうじゃ、それでは大内家ともな」
 この家ともというのだ。
「攻めてくればな」
「戦いますな」
「そして退ける、ただ先程も言ったが」
「大内殿ご自身は、ですな」
「戦が好きでも向いてもおらぬな」
 大内義隆、彼はというのだ。
「だから実は安芸攻めもな」
「乗り気でないと」
「しかしその大内殿が寵愛しておられるな」
「陶殿ですか」
「あの御仁は非常に血の気の多い御仁じゃ」
 義隆とは違ってというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「うむ、陶殿が大内殿を引っ張る形でな」
「安芸攻めとなりますか」
「そうなるであろう、しかし」
 元就は鋭い目になり志道に話した。
「わしは陶殿の考えがわかる」
「どういった御仁でしょうか」
「戦のことはわかっておられる」
「つまり戦は強い」
「うむ、戦の場での采配はよく武勇もお持ちじゃ」
「では手強い方ですな」
「戦の場ではな、だが戦に強いあまり武に頼る」
 陶はそうした者だとだ、元就は看破した。
「また大内家は石高が高く従って兵も多い」
「まさに西国最大の大名ですな」
「そのこともよくご存知じゃ」
「やはり戦は数ですな」
「そのこともな」
「ご存知ですな」
「左様、戦上手なうえに戦のことも大内家のこともよくわかっておる」
 それが陶だというのだ。
「しかしな、それに頼っておる」
「ご自身のことと大内家の力に」
「それで攻めるのは強いが」
「それでもですか」
「守るのはどうか、そして謀は」
 こちらのこともだ、元就は話した。
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