加速世界の中で
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の為なら、君はどれだけを犠牲にできる?」
「そんなの……選べないよ!」
「そう。結局君のひよりへの気持ちは、それだけなんだね」
「姫和ちゃんは……姫和ちゃんは……!」
可奈美の剣が、どんどん鈍っていく。その中で、可奈美の脳裏は、戦いのこと以外ばかりを考えていた。
『これが私の真の一つの太刀だ!』
『見事だ』
『このまま私と共に隠世の彼方へ!』
『だめ___届かない___ダメ?』
手が____届かなかった____半分持つって言ったのに____結局全部___
「違う!」
自身に発破をかけ、可奈美は刀の力を上げた。
「私は、助けたい! 皆を……全員!」
「でも、そのためにひよりを犠牲にするの?」
「しない! 私は、何年かかってもどれだけ苦労をしたとしても、絶対に姫和ちゃんを助ける! でも、それは聖杯に頼らない、別の方法で!」
タキオン粒子が充満する可奈美とダークカブトの世界は、光の速さの世界。その中でさえ、可奈美はさらに速度を上げる。
それは、先ほどまで優位だったダークカブトの速度すらも上回っていく。
「でも、それでできるの? ひよりは……きっと零れるよ?」
「それでもあきらめない! できるかできないかは別だよ!」
可奈美の刃が、とうとうダークカブトの体に届いた。
ダークカブトの黒い鎧を斬り裂き、その姿を内陸の方角へ飛ばす。
「この先に何が待っているかなんて分からない。でも、ここで流した涙を笑って話せるように! そのために私は、姫和ちゃんを助ける方法を探し続ける!」
「……そのせいで、君がどうなってもいいの?」
「うん。命……半分くらいは惜しくないよ」
「そこは全部じゃないんだね」
少し、ダークカブトの顔が下に動いた。笑ったのかどうか。マスクの下など、可奈美には知る由もなかった。
『3』
「ライダーキック」
『ライダーキック』
ハルトを倒した技。カブトムシから出たエネルギーが頭上の角を伝い、彼の右足に降りていく。
ダークカブトは、そのまま物言わずに可奈美を見返していた。
可奈美は静かに頷く。両足を肩幅に広げ、千鳥を降ろす。
全身に、疲れが出ている。加速空間での活動もそろそろ限界だと、可奈美も理解していた。
だから。
「この一太刀で決める!」
駆け出した可奈美。それに対し、ダークカブトも動き出す。
そして。
「迅位斬!」
迅位第四段階と呼ばれる速度。それは、ダークカブトの回し蹴りを掻い潜り、そのままダークカブトの体を斬り裂いた。
「ぐぁっ……!」
ダークカブトの悲鳴。大きな爆発が鼓膜に届いた。
同時に伝わる波の音。迅位の速度は、終わりを迎えたの
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