暑気払いに夏を感じる1杯を・3
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。しかし、彼氏が出来た後も鈴谷の過剰なスキンシップは止まなかった。寧ろ、その度合いを増してきた。
だから俺は気付いたんだ。鈴谷は俺を諦めきれていない。未練を断ち切る為に他の恋人を作ったのに、心の奥の方では俺を求めてしまってるんだとな。
だからこそ、俺は鈴谷を突き放した。極力秘書艦の当番から外し、直接的に接触時間を減らした。その間に彼氏君が鈴谷の心をかっさらっていってくれるのを期待して。どうやらその目論みは上手く行った。だから俺は、『ザクロ・モヒート』にメッセージを込めた。ザクロとライムの甘味と酸味で初恋の味を表現し、トニックウォーターの渋味で拒否の意を表し。仕上げにミントの清涼感でサッパリ忘れてくれ、と。どうやらこっちも上手く伝わったらしい。
「改めて結婚おめでとう、鈴谷。ま、俺みたいな一人の女を選べねぇ糞野郎なんざサッサと忘れて、お前一人を愛してくれる奴と幸せになりな」
「うん……うん……!」
鈴谷はグラスを傾けながら、ゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいる。そんなに度数の低い酒ではないんだがな……まぁ、泣きながら飲んでる奴に声を掛けるなんて野暮は出来ねぇよ。泣かせたの俺だし。
「あ〜!飲んで泣いたらサッパリした!提督、アタシ帰るね!」
「おぅ、またな」
そう言って颯爽と立ち上がった鈴谷目には既に涙は無かった。浮かぶのは大輪の向日葵が咲いたような、満面の笑顔だ。
「鈴谷!」
「ん?」
ドアノブに手をかけた鈴谷に思わず声をかける。
「……お前、『イイ女』になったな」
「も〜、そういうの反則だってばぁ!」
くるりとこっちを向いた鈴谷の顔は、困ったようなそれでいて嬉しさを隠し切れないような、何とも言えない苦笑いだった。しかし、その左目の眦から零れ落ちた雫は見間違いでは無かったはずだ。
「……はぁ〜」
「何と言うか、『大人の恋』でしたね」
鈴谷の居なくなった店内で、長波と早霜が言葉を交わしている。茶化す様な喋り方ではなく、寧ろそれを羨む様な喋り方。普段男勝りだったりあまり感情を表に出さない2人ではあるが、どうやら鈴谷の様な初恋の物語とその終わりは、とてつもなく眩しい物に映ったらしい。その一方で、彼女達の実の姉は純粋とは程遠い下世話な言い寄り方をしていた訳だが。
「うぉ〜い、いつまで狸寝入りにシケこんでんだぁ?夕雲」
カウンターに突っ伏していた夕雲がビクン!と大きく痙攣する。
「気付いてたの?」
「アホか。店内で寝る客なんて幾らでも見てきてんだぞ?寝たフリかどうか位の見分けは付くってーの」
「鈴谷さんのお話を聞いてたら、何だか恥ずかしくなっちゃって」
「そうかぁ?」
感動してる長波達
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