コエムシ
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コエムシが語る。
『先輩は戦わねえテメエらも、それはそれで尊重してるがよ。オレは嫌なんだよ。ただの傍観者なんざ』
コエムシがケラケラと笑い声を上げながらその体を震わせる。
オーロラがぐんぐんと近づいてくる。ハルトの部屋の物を無視しながら、ハルトと可奈美を飲み込むように迫る。
視界が銀一色に染まる中、コエムシの声がした。
『戦わねえマスターに用はねえ。消えろ』
「……ここは?」
オーロラが晴れると、そこはラビットハウスではなかった。
古い木製の匂いは消失し、代わりにハルトの鼻腔を染めるのは、潮の香り。
海に面し、ボコボコの地形である岩石海岸。潮の浸食により、最悪の足場になっているところだった。
そして、夜に慣れた眼を、空の太陽が傷つける。
「太陽? 今、昼なのか? どうなっているんだ? 夜だったはずなのに……?」
「時間も違う……? さっきのオーロラって、場所だけでなく、時間も越えられるのかな?」
「便利すぎるどこでもドアってことか……なんでそんなのが」
『違えよ』
その答えを、コエムシが伝えてくれた。
彼は、その背後に新たなオーロラを発生させており、ニタリとした笑みを崩さない。
『どこでもドアじゃ、テメエら逃げ帰るだろうが。ここは別世界。テメエらを処刑するために用意した世界だ』
「なんだと?」
『キキキ……せいぜい覚えておけよ。最期の景色がこの海岸なんだからよ』
すると、コエムシの背後に、銀色のオーロラが発生する。
それは次に、コエムシに近づいていく。
『んで、その処刑人もオレ様が用意した』
オーロラがコエムシを通過する。
すると、その岩場には、先ほどまではいない人影がいた。
『名前は……悪ぃ。忘れちまった』
その人物の特徴。
まるでカブトムシのような頭部の仮面をしていた。漆黒のボディにはところどころに赤い電子線が走り、その目に当たる部分は黄色のバイザーになっていた。ウィザードと同様にベルトが特徴だが、バックルにあるのは掌ではなく、黒いカブトムシ型の機械。
『えっと……おい。お前、名前なんだっけ?』
「壊してやる……君たちを!」
小声ながら、絞り出すような声の処刑人。彼は、岩場から飛び降り、ハルト、可奈美と同じ地平に立つ。
コエムシはその大きな頭を振る。
『だめだ。話通じねえ』
コエムシはやれやれと体を振る。そして、何だったかと考えるように『うーん』と頭をひねらせている。
『ああ! 思い出した! ダブトだダブト! コイツの名前はダークカブト! 略してダブトだ!』
「ダークカブト?」
『ああ。思い人を自分と同じ姿の奴に寝取られて死んじまった奴をオレ様が復活させてやったのよ。
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