疾走編
第三十話 前途多難
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来る訳だ」
「キャゼルヌ先輩、それだと内務省は門閥貴族の反感を買うのではないですか」
「大貴族に手を出す訳ではない、それにドジ踏んで戦死した貴族の未亡人を庇う程門閥貴族もお人好しじゃない。バーゼル夫人を収監すれば、貴族にも厳しい内務省、と平民達にアピール出来る」
「結果、平民達は門閥貴族に対する反感を募らせるでしょう?となると内務省め、余計な事をしやがって、と門閥貴族は思うのではないですか」
「それを考えずに内務省がバーゼル夫人を収監する訳がないだろう?庇う事がないとはいえ、貴族には違いない。事前の根回しはするだろうよ」
「なるほど…」
「バーゼル夫人が平気でいられるのは、今も滞りなく袖の下が払われ続けているからなんだ。しかしそれも長続きはしない。内務省としては彼女が何らかの動きを見せた時が手切れの時、と判断するだろう。だからフェザーンに夫人が向かうのは危険なんだ。…というのがカイザーリング氏の意見だ」
ヤン中佐が大きくため息を吐いた。吐きたくなる気持ちもよく分かる。
「よく受けたね、こんな任務」
「中佐、めちゃくちゃ他人事じゃないですか」
「だって、命ぜられたのは私じゃないからね。しかし、そうなると帝国本土内に工作員を送り込む必要があるんじゃないかな」
「そうなんです。話の途中からそう思いました。生半可じゃないですよ。薔薇の騎士…ローゼンリッターしか居ないのではないかと思います」
「そうだね。帝国の慣習を知っている人間、帝国公用語を話せる人間。戦闘能力も高いから夫人の護衛にもピッタリだ。しかし…」
「しかし、何です?」
「引き受けてくれるかな」
「明日、マイクに話してみます」
「ダグラス大尉を連れて行くのかい?彼は同盟生まれだろう?帝国の潜入には向いていないんじゃないか」
「奴も行きたがるでしょうが、そこはひとまず置いておいて、先ずは信頼出来る人間を選んでもらおうと思います」
「なるほど。そういう事なら私も一人紹介出来る奴がいるよ。フェザーン商人でボリス・コーネフという男だ。今は…確か雇われ船長をしている筈だよ。幼なじみなんだ」
「悪たれのボリス・キッド、ですね」
「何故君がその渾名を…?」
「え?ほ、ほら、エル・ファシルで話してくれたじゃないですか。脱出行の時に」
「そうだったか??…まあいいか、その悪たれボリスには私から連絡して置こう。どうでしょう、先輩」
「そうだな。今日はこんな所だろう。明日、ダグラス大尉には私からも連絡しよう。ウィンチェスター、明日の予定は?」
「二人でテルヌーゼンへ。エリカの実家へ行ってきます」
「そうか、そうだな。ハイネセンには居ない方がいいかもしれんな。人選と準備で三、四日はかかるだろう。二人で羽根を伸ばして来い」
「ありがとうございます。じゃエリカを駅まで送って来ま
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