第10話 束の間の安らぎは振り切らずに満喫する
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じみであるが為に幾度となくこの豪邸を訪れてはいるが、未だにその自分にとっての高嶺の花には圧巻されてしまう所であるのだった。
一方で、姫子にとってもう一人の客人となった八雲泉美はというと、こちらは千影とは対称的にあっけらかんとした振る舞いであった。
それを見ながら千影は思う──確か、泉美さんとこの八雲家も、立派な名家だったから、こういうのは見慣れているという事なのね、と。
そこで千影は、自分だけがこの邸宅に圧倒されてしまっていて庶民性丸出しになってしまっているなと思い至るのであった。それは何だかみっともない気がしたので、彼女はここで平静を装う事にしたのであった。
「姫子、今日はあなたの家にお邪魔させてもらうけど、改めていいかしら?」
「うん、何の問題もないよ。ちゃんとアリアには前もって言ってあるからね♪」
そう言うと、姫子は十分すぎるボリュームのある胸を張って見せるのであった。
「……」
それを見ながら、『この問題』でも自分は仲間はずれか、と千影は内心で舌打ちするしかなかったのだ。憐れ。
千影がそのような人知れずに心の葛藤をしまくっている間にも、一行は稲田家のチャイムを鳴らした後、アリアに承諾を得て、邸宅の玄関へと辿り着いていたのであった。
そして、ガチャリと荘厳な扉が開くと、中から人が出迎えてくれたのである。
「お帰りなさいませ、姫子様」
そう言って出迎えたのは、メイド服に身を包んだ妙齢の女性であったのだ。
そう、この人が稲田家専属のメイド長たる、『如月アリア』その人であるのだった。
髪は誰かがメイドだからと狙った訳ではないのだが銀髪であり、それをショートカットにして凜々しく決めていた。
そのアリアに対して、姫子は気兼ねなく帰宅の挨拶をする。
「ただいま〜アリア。それで、電話で知らせた通り、今日はお友達を連れてきたからね♪」
「ええ、承っております」
姫子にそう言われたアリアは改めてこの場の姫子以外の者へと意識を向け、そして言うのであった。
「ようこそ我が稲田家へ。千影さん、お久しぶりです。そして、八雲泉美さん、初めまして。私、稲田家でメイド長を務めさせて頂いている、如月アリアと申します」
言ってアリアはニコリと千影と泉美へと微笑んで見せたのであった。
その瞬間、泉美に電流走る。そして、彼女が思った事はこうだ。
(千影さん……この人、『出来ます』ね?)
(さすがね泉美さん。お目が高いわよ)
泉美のその弁には千影も認める所であるのだった。彼女もこうして姫子宅を訪れる度に、アリアの隙のない立ち振る舞いっぷりにはいつも呆気に取られていたのだ。
そのようにして千影と共にアリアへと称賛の念を送っていた泉美であったが、ここで彼女は今までここへ来る時の為に考えていた事を口に出力するのであった
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