第10話 束の間の安らぎは振り切らずに満喫する
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を聞いた和希は、事の内容を反芻しながら頷いていたのであった。
「事のあらましは大体分かりました。それで、あなたはこれから私達に協力をしたい、そういう事ですね?」
「はい」
そのやり取りが泉美が話題にしている事なのであった。
実を言うと、泉美はかぐらやたまと違って、自身の搭乗機の神機楼を破壊されて大邪の力から解放されておらず、今もその力が残っているのだ。
しかし、元から巫女達を取って喰おうとする気のない泉美は、別に大邪に操られている状態ではなく、しっかりと自分の意思で以て行動出来るのである。
故に、頭の回る彼女はその事を、大邪との戦いを少しでも早く終わらせる為に利用してやろうと思い至り、そして和希に申し出を行っているという事なのであった。
そして、肝心の和希からの答えが返ってくる。
「協力ありがとうございます。こちらとしても現状は猫の手も借りたい所です。故にあなたの申し出は助かります」
「はい、喜んで力になります」
快く自分の提案を聞いてくれる和希に、泉美はありがたく思いつつも、同時に困惑してしまうのであった。
──この、邪神に荷担した自分をそうすんなりと受け入れてくれるのか、と。
なので、思わず泉美は彼に対して言ってしまうのであった。
「しかし、どうしてこうもすんなりと私を許してくれるのですか? 私は平手打ちの一つでもくるだろうと覚悟していましたのに?」
それが、泉美が抱く気持ちであった。自分は『悪事を働いた』のだ。なので、それに対する制裁の一つでもあるだろうと心に決めていた所に、これである。
そう思い抱く泉美に対して、和希は極めて物腰柔らかく振る舞いながら、こう言うのであった。
「それはですね、私は罰を与えるという方法で人を動かすのを好まないタチなのでしてね」
そう言った後、諭すように彼は続ける。
「そして、罰をもらう事で心を軽くしようとするのはいけませんよ。それは、自分自身から逃げる事ですから」
「あっ……」
その言葉を聞いた泉美は、呆気に取られてしまうのであった。──正に和希は彼女の心を見透かしているかのようであったからだ。
現に彼女は、罰を受ける事で気を晴らそうとしていたからだ。そこへ和希の『厳しさ』の籠もったこの言である。
だが、それは泉美を不快感で包むものではなかったのだ。それは、『逃げ』だと相手を責める人の心情は大体その発言者自身からの逃げを意味しているのであるが。
和希は違ったのだ。逃げてはいけないと言ったのは自分自身だという事であったのだ。故にその事が泉美の心の奥底まで優しく染み込んでいったのである。
そのような心持ちに包まれている泉美を更に諭すように、和希は締め括った。
「それに、罰を与えるというのは、今までのその人を否定する事です。私は今までの人生を送って
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