第9話 八雲の怪:後編
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子さん。巫女の姿になっているという事は敵と戦っているという事ですね?」
「はい」
その質問に姫子は素直に答える。今のこの状況で、この上ない頼りになる人から掛けられた言葉には安心感があるからだ。
そんな姫子を見ながら微笑むと、和希は続ける。
「でも、僕の所まで来たからには安心です。後は僕に任せて、姫子さんは逃げて、もう戦わなくていいですよ」
そう言いながら和希は腰に差した鞘へと手を向ける。彼は神機楼は扱えないものの、自身の鍛錬は欠かしておらず、肉弾戦をそつなくこなす事が出来るのだ。
そんな和希を目の当たりにしながら姫子は言う。
「ありがとうございます、分かりました」
そう言いながら姫子は彼の言葉に従い大神家に避難……する事なく銃口を何とその和希へと向けていたのであった。
「あなたの負けだって事がこれで分かりましたよ……」
「何を……?」
この状況で姫子の言っている事は支離滅裂であろう。故に和希は疑問を口にするのだが、既に姫子に『ごまかし』は通用しないでいた。
「面白い戦い方するんですね、『八雲泉美』さん?」
「……」
その一言に和希……の姿を模した人物は一瞬無言となるが、どうやら観念してこの場に相応しい言葉を選ぶのであった。
「参りましたよ稲田さん。あなたの言う通り、これでこの私、『大邪衆八の首 八雲泉美』の負けです」
そう言うと和希の姿を取った者はパチンと指を鳴らす。
すると、大神家だと思われていたその光景はガラスが割れるように砕け散り、辺りは一気に変貌を遂げるのであった。
そして、この場所は元の住宅街へと戻っていたのであった。空の様子は黄昏時からほぼ夕陽が沈んだ群青色の夜を迎え入れようとしている時間帯だった。
それに続いて、後は自分が元の姿に戻らないといけないだろう。根が真面目なその人は、いつまでも相手が敬愛する人物の姿のままでいるという無礼な行為は控えたかったのである。
その者の思いを大邪の力が受け取ったのか、目の前で展開されていたその和希の姿もドロドロと溶け出して形を変えていったのであった。
その後そこに存在していたのは、水色のドリルツインテールに穂村宮高校女生徒の制服に身を包み、人並みの背丈と人並みではないボリュームの胸元を備えた少女だったのである。だが、以前会った時と比べて、何かが引っ掛かる所がある。
そして、遂に正体を現した大邪の一人は、開口一番に姫子にこう言うのであった。
「謝って済む問題ではないのは分かっていますが……ごめんなさい!」
そのまま、彼女──泉美は姫子の前で頭を垂れ、謝罪の言葉を投げ掛けたのである。
敵からそのように謝られては当然困惑してしまう姫子であったが、その事を受け止めつつ泉美は続ける。
「こんな事しても何にもならないと分かっていたのに……、
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