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神機楼戦記オクトメディウム
第9話 八雲の怪:後編
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彼女には選択肢がないのであるが。
「ええい、ままよ!」
 姫子はその意味を深く考えずに自分の胸に向けて宙で十字架を描くのであった。やっぱり何故十字架なのかは分からなかったが。
 だが、意味はよく分からないまでも、彼女は自分の気持ちを鼓舞する事は出来たのであった。彼女にとっては意味よりも気持ちの方が大切なのである。
 そして、姫子は意を決して吊り橋へと第一歩を進めた。すると、案の定ギィィィと頼りなげな木の軋む音が奏でられるのであった。
 そんな無生物の洗礼に若干やるせない心持ちにされつつも、姫子は第二歩、第三歩と吊り橋へとその足を運んで行った。
 そうこうして姫子は吊り橋を歩いて行く事で、彼女の気持ちはどんどん晴れやかになっていくのであった。
 それは、吊り橋は山と山の中間に架けられる物である。故に、その途中からは見渡す限りの空が堪能出来たからであった。
 しかも、この異空間は現実の世界の時間帯とリンクしている為だろうか、今ここから見えるのは余す事なく空に広がる夕陽のビジョンであるのだった。
 このような絶景には人生の中でもそうありつけるものではないだろうと姫子は思い、今のこの瞬間を目に焼き付けようとするのであった。
 そして、時折流れていくそよ風も心躍らされるものがあったのだ。
 加えて、割と重要な事ではないがと姫子は思うのであった。それは、今の巫女装束の袴がズボン型であった事である。これがスカート型だったら、この吊り橋で『そこ』を抜けていく風がかなり恐怖心を煽ってしまったのではないかと思ったからである。こういう時ガードの固い服というのは有り難いものだ。
 そのような結構くだらない事を考えつつも、姫子は今の状況が『敵の攻撃』である事は決して忘れてはいなかったのであった。
「……折角刺激的な吊り橋の冒険なんだから、邪魔はしないで欲しかったなあ」
 そう姫子は言うと、姫子は懐から銃を引き抜いたのである。
 無論、それは『敵』の攻撃に備えて、である。そして、その敵は彼女の遙か下から襲い掛かってきたのであった。
 突如として、姫子の歩く吊り橋の下に流れる川の水が数ヶ所でポコポコと泡立ったのが分かったのだ。
 吊り橋を歩く時は下を見るのは御法度であるが、咄嗟に敵の攻撃を察した姫子はその例外処置を取り、攻撃を目視して備えたのであった。
 次の瞬間、それは起こった。数ヶ所で泡立った所から、水の塊が上空にいる姫子目掛けて飛び掛かってきたのであった。
 それは、文字通りの意味である事は姫子には分かったのであった。何故なら、彼女の動体視力にてそこに生物の類いは存在しない事が見受けられたからである。
 その瞬間、姫子は判断する。──これは生き物ではないなら、と。
 瞬時に迷いを振り切った姫子は、その水の弾丸目掛け銃の引き金を引いたのであっ
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