第8話 八雲の怪:前編
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の顔見知りには存在しない、修道服に身を包んだ黒づくめの美女であったのである。
その瞬間、頭の切れる彼女は落ち着いてこう言葉を切り出すのであった。
「あなた、明らかにこの学校の生徒でも先生でもないわね。つまり、外部の者の不法侵入。変な事をしたら警察を呼べば済む事ですよ」
泉美のその合理的な物言いにも動じずに、ミヤコはにっこりと妖艶な笑みを浮かべながら、泉美の心を溶かすように心地良い声色で言うのであった。
「八雲泉美……さすがはIQ152にして穂村宮高校でも成績優秀な女生徒だけの事はあるわね」
そう言いながらミヤコは泉美に近寄りながら続ける。
「それと、その心の奥底に巣喰う嫉妬心……色々と我ら大邪の為に役に立つ要素を持った子という訳ね……」
「……」
その耳から伝わり胸の内を蕩けさせるかのような囁きに、泉美の平常心はバターのように溶かされていく。
「あなた……我ら大邪の下へ来なさい。そうすればあなたの心に溜まったものを吐き出す力を得る事が出来るわ。もとより……」
そして、ミヤコは決定打となる一言を打ち出すのであった。
「最初から、あなたは大邪として選ばれた存在なのですからね」
◇ ◇ ◇
泉美の一見があったその後は、暫くは大邪の襲撃もなく千影と姫子の二人は何事もなく高校生活を送れていたのであった。
そして、その日も二人はいつものように高校生活を満喫すると、その後は放課後が迎えるだけであったのである。
「それじゃあね、姫子」
「じゃあね、千影ちゃん」
こうして分かれの挨拶をし、二人は別々に帰路に着くのであった。
ちなみに、この日の千影の用というのは、先日のようなアルバイトではなく、彼女の家での忍者としての修行であるのだった。
そう、彼女はアルバイトと忍術という二つの日課が存在していたのであった。普通の人なら根を上げるようなハードな生活をこなしてしまう辺り、やはり彼女は些か普通の女子高生とは言えない存在という事なのである。
そんな人並み外れた努力と苦労を密かに心の中で労いつつ、姫子は自分は自分のペースで事を成して行こうと、この日も一人で家へと向かうのであった。
そして、彼女はその小柄な体躯で、しっかりとした歩で持って我が家を目指して歩くのであった。そんな彼女を迎えるのはオレンジ色に包まれた優しいコントラストとなった夕刻の通学路であるのだった。
しかし、それが『いつもの』帰路ではない事は楽天家な彼女でも気付く所であったのである。──微妙に彼女の視界へ飛び込む構造が違っていたからだ。
「うん、まんまと敵の手中に収まっちゃったみたいだね……」
そう自嘲気味に姫子は呟くのであった。もう少し気を付けていればこうはならなったかも知れないと自分を戒める意味合いで。
だが、過ぎた事を気にするより
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