第7話 千影と決闘士:後編
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と、そこから不可視の波動を送り込んできたのであった。
「それ以降の事ね、私は今このように人型の姿になって人の言葉も理解出来る上に話せるまでになっていたのは」
そして、たまは締め括りとしてこう言うのであった。──自分は『妖怪』のような存在となったのだろうと。
『妖怪』。それは科学で発展した現代において非現実的な概念の集大成であり、昔から妖怪の仕業とされたような現象も、大体は現代科学において物理的に解明されている事である。
だが、その科学で以ってしても解明出来ていない事も確かに存在するのだ。
そもそも、大邪のような存在は科学の範疇を逸脱した超常的な概念である。そんな彼らを科学という物差しで計っていては命取りであろう。
幸い、千影の家系は古来より伝わる忍者であるのだ。なので、妖怪という存在に世に知られない所で関わってきたが為に、たまのこの眉唾ものの話も受け止める事が出来たのであった。
そして、事の真相を知った千影は、ますます申し訳ない気持ちが胸の内を支配するのであった。
「ごめんね……あなたがそこまでさせてしまって。謝って許してもらおうなんて虫のいい話よね」
「……」
その千影の言葉を無言で聞くたま。その様子を見ながら千影はある事に踏み切る事決意の念を燃やす。
「あなたがそれで気が晴れるのなら好きなだけやると構わないわ。でも、『本当にあなたは復讐を望んでいるの』?」
「……」
その言葉にもたまは無言であった。やはり、こうして大邪の刺客として千影を襲ったけれど、迷う所があったのだろう。
しかし、次にたまの口から出たのは、この流れに望ましいものではなかったのであった。
「そうだね……復讐って基本的に生産性というものがないから、あたいも乗り気じゃないんだけどね。でも、こうしないと自分の心を保っていられないんだよね……」
と、たまはそう切実に自分の心の内を告白したのだった。
それは、もしかしたら復讐に身を置く者の多くが抱く感情かも知れないだろう。
頭では何も建設的なものを生み出す事はないと分かっていながらも、自身の胸を蝕む恨みの念をどうにかしたいが為に、報復という形を取るしかなくなってしまうというのが多いケースであろう。
どうやら当のたまもその一人であるようであった。そして、流れは最悪の形となる。
「そういう訳で巫女さん。あなたにそこまで恨みはないのだけれど、私の心の平穏の為に……お覚悟願うわ!」
そう言い切った瞬間、たまの纏う雰囲気が変わったのであった。
恐らく、これは『妖気』というものであろう。もはや、今はそのような非科学的な概念も真実として受け止めなければならないようだ。
そして、千影はこの瞬間悟った。──次で彼女は勝負に出てくる、と。
そう想い至った千影も覚悟を決める所であった。こちら
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