第7話 千影と決闘士:後編
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をあげながら佇んでいたのであった。
その事は、千影の心に暗い影を落とし込み、それが今でも続いていたのである。
その後、ある日を境にその猫の姿がきっかりと消え失せてしまったのだ。
前向きな考え方をすれば、誰か飼い手が現れたのかも知れない。だが、もしかしたら……。
しかし、その猫が今こうして人の姿となって自分の目の前に現れているのだ。それが何を意味するのかを千影は聞かないといけないだろう。
「一体、あなたに何があったの……?」
「それはね……信じてもらえないかも知れないけど……」
その言葉を吐いたたまは、そこで一呼吸置いて、そして事のあらましを明かしていくのであった。
たま曰く、その日も彼女は道端で箱の中でその時をただ只管過ごしていたのである。
彼女は、猫としての思考で、これから自分がどうなるのだろうかという事を漠然と考えていた。
──このまま誰も助けてくれないのか。自分はその短い命を終えてしまうのかというような事を、勿論猫なので人間のようにはっきりと言葉では認識出来なかったのだが、そのような意味合いの思考が彼女の頭の中を巡っていたのであった。
そこまで彼女が追い詰められた時であった。彼女の目の前にある人間の女性が現れたのである。
その女性は修道服を着た人だったが、猫である彼女には当然そのような事は理解出来なかった。だが、それでも人間という他の種族であるにも関わらず、その存在は『とても美しい』と、それだけを分からせる影響力があったのだ。
そして、その修道女は彼女の前に立つと、そのまま腰を低くしてかがんで見せたのである。
そんな猫である自分の目線に合わせてくれるその仕草に、彼女は思わず心惹かれてしまっていた。
彼女がそのような思いを猫なりに馳せていると、その女性は人語が分からない筈の猫に話し掛けてきたのであった。
「可哀想に……飼い主に捨てられてしまったのね……」
その言葉は、心の底から同情を抱いている事が分かる声色で以て綴られたのである。するとどうだろう。猫である彼女に、人間の筈のその修道女の言葉が伝わってくるような感覚が襲ってきたのであった。
──何故か自分に通じる意思表示が出来る。その事に気付いた彼女は、そのまま修道女の言葉に耳を傾けようとするのだった。
そして、待ちわびた次の言葉がその修道女から発せられる。
「それから……あなたの事をいつも見ていたのに、あなたを見捨てた人……ひどいわね」
人語を持たない猫には当然返す言葉はないが、その言葉が彼女の心に響く。その感触が分かっているかのように修道女は極め付きの台詞を刻むのであった。
「どう? そんなひどい人には『復讐』したいとは思わない? だから、あなたにはその『力』をあげるわ」
言い切った修道女は、その場で猫の目の前で両手を翳す
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