第7話 千影と決闘士:後編
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時に伸ばして、千影へと斬り掛かったのであった。そして、その刃は敵を捉えた。
しかし、瞬間にたまは『してやられた』事を察するのであった。何故なら彼女の手の感触にあったのは、人間の肉体のそれではなかったからだ。
そのからくりを、たまは瞬時に割り出す。
「『身代わりの術』って奴って事ね……」
そう、たまが今爪で切り裂いたのは、無骨な人間位の大きさの丸太であったのである。彼女の爪刃に手応えがあったのは、その木の塊に傷を付けたに過ぎなかったという事である。
つまり、たまは千影にしてやられたという事であった。まんまと再び彼女は森の戦場を利用して闇へと紛れる事に成功したという訳である。
「……」
その事実に、たまは歯噛みをするのであった。こうして再び戦いは振り出しに戻ったのだから。
だが、それでも今の事でたまの方に分が向いて来た事が分かるのであった。──こうして先程『嗅覚』にて千影を探知出来る事が判明したのであるから。
しかし、これはたまにとって追い詰められての決断であるのだった。人間である千影とは、『人間』として戦いたかったのである。
そう、それが意味する所は……。その事に千影も今確信していたのである。
故に、意を決して『それ』に踏み込むべく、千影は口を開くのであった。
「今ので確信したわ。あなた……『人間ではない』わね?」
それこそが揺るぎない真実であるのだった。そう、このたまは人ならざる者であり、その猫耳と尻尾はアクセサリーなどではなく本物であるという事だ。
そして、千影はまだ推測の段階であるが、次なる課題へと踏み込んでいく。要は立ち入り検査的な思い切った決断である。
「そして……。あなたは『あの時の猫』よね?」
「!!」
二足歩行する人間の姿の者に対して言うには支離滅裂な口ぶりであろう。だが、今のたまの反応を見る限り、どうやらそれが真実のようだ。千影は今その事を事実として受け止めるのであった。
それならば……ここでまず第一声に持ってこなければならない事があるのだ。
「あの時は……拾ってあげられなくて……ごめんね」
「あ……」
この瞬間たまは察したようだ。──どうやらこの千影は事の真相を把握するに至ったのだ、と。
このような流れでは話の要点が掴めないと思われるので、ここで説明しておく必要があるだろう。
千影は以前、通学路にて箱に入れられた捨て猫を見掛け始めるという事があったのだ。
勿論彼女は可哀想だと思った。だが、家が貧乏である彼女の家では猫の面倒を見るだけの余裕がない事は彼女が良く分かっていたのだ。
故に、彼女は他に飼い主が現れて連れて行ってくれる事を期待しながら日々を過ごしたのであった。
だが、現実はそうはいかなかったのである。行く日も行く日もその道には猫が寂しそうに鳴き声
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