第6話 千影と決闘士:前編
[1/9]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
そこは、人通りの少ない小道。そして、そこにか細い声が聞こえる。
「にゃー……にゃー……」
その声は今にも消え入りそうな声をしているのであった。だが、千影はその声の主を見ているだけしか出来なかったのである。
そして、心が苦痛に苛まれるのを引きずりながら、彼女はその場を後にし──そこで意識が覚醒した。
現へと舞い戻った千影は、自分の体が汗ばみ、息が切れ切れなのを認識しながら呟く。
「また……あの夢なのね……」
その夢は今でも幾度となく千影の心に忍び寄り続けていたのであった。
◇ ◇ ◇
そして、千影は姫子と一緒に普段通りに穂村宮高校での学生生活に身を投じていた。
本当なら、大邪衆の一人である『夕陽かぐら』を姫子がその呪縛から解放した事を本格的に和希に会って話し合うべきだろう。
だが、二人の学園生活の妨げとなるような事はしたくないという和希の意向で、本格的には会ってはいないのである。
本格的に会うのは、休日を利用しての形になるだろう。それも、羽根を休める為の憩いの時である休日を台無しにしないように、割くのは適度な時間で以てである。
だが、和希にはかぐらが使用していた、イワトノカイヒの媒体となっていたペンライトを受け渡しているのである。勿論、かぐらの承諾を得た上で、である。
この事は和希からの提案なのであった。彼曰く、『これで必要なものは揃った』との事である。
一体どういう事か分からない二人であったが、今はその事を気にする事なく学園生活を満喫する所が和希の望む形でもあろう。
しかし、その理想の時間をこの日千影は満足に味わえていないのであった。今日も『あの事』を思い出してしまったからである。
◇ ◇ ◇
ここはこの世界ならざる場所に存在する『黄泉比良坂』。そう、大邪の本拠地であるそこである。
かぐらの事後に、再び彼女らは集まり、今後の方針について話を進めていたのであった。
そして、ここでもまず口を開いていたのは、例の修道女のシスター・ミヤコである。そんな彼女の表情は芳しくはない。
それも無理からぬ事であろう。何故なら……。
「そう……、かぐらが巫女の力で大邪から解放されたというのね……」
当然その話題が挙がるであろう。一般的な倫理観から見れば邪悪な力に取り込まれていた人間がそこから解放されたとなれば喜ばしい事であろう。
だが、生憎この場に集まった者達は、その『邪悪に取り込まれて眷属となった者達』なのである。それが意味する事は、彼女らの仲間が減った……それ以上の意味合いは存在しないという事だ。
同志を一人失った事は喜ばしい事ではない。だが、彼女達とて、それで引く訳にはいかないのである。
その意思を胸に秘めながら、ミヤコは再度口を開く。
「それでは、次に『出て』く
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ