第6話 千影と決闘士:前編
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ーの類いでない事も、機械と生物の動きの違いを見破る事に長けた千影には造作もなく分かる事だ。
その得体の知れない『現実』に、何故か千影は背筋に嫌な汗を感じずにはいられなかったのであった。──何か、捨て置けない事実がそこに転がっている気がするからだ。
ともあれ、千影はこの『たま』を大邪の魔手から救い出すべく戦いに集中する事にする。この者も、何かを大邪の手によって利用されているのだろうと踏んで。
そう考えると、ますます千影には言いようのない不安が苛んでくるのであった。これが一体何から来るのか分からない彼女は困惑するしかない。
だが、戦いにおいて迷いは命取りであるのだ。姫子の場合、こういう時は金髪、サングラス、ノースリーブの大尉を持ち出すだろうが、生憎千影はそういうオタクのタイプの人間ではないし、そもそもそんな余裕はないのである。
そして、否応にも今はサシの戦いに気を向けなければならないだろう。
何せ、ここは人気のない森の中であるからだ。
ここを決闘の場に選んだのは、千影とたまの二人が共に承諾した事なのであった。
それは、身のこなしに優れた二人の特性を共に活かす為の選択なのであった。二人とも、遮蔽物や障害物がある方が、より自身の身体能力を活かせるが故に。
この取り決めは、千影に不利というものであろう。大邪に属するたまは人ならざる力を持っている為に仲間の助けがなくても一人で戦えるだろうが、それを人間たる千影にも当てはめるのは酷と言えよう。
だが、千影は敢えてその不利な条件の戦いに身を投じたのであった。
それは、優れた実力を持つだろう敵への経緯であるのが一つ。そして、もう一つは『この問題は千影自身の手で解決しなければならないだろう』という漠然とした定義があるのだった。
そして、いよいよ二人の決闘が始まろうとしていた。
「それじゃあ始めましょうか、千影」
「ええ、私はいつでもいいわよ、たま」
そう言い合いながら、互いにアイコンタクトを取る。二人ともそこから相手の心情を読み取ろうとしているのだ。
そして、互いにその瞳から真摯なものを感じ取りあった二人は、一斉に掛け声を上げるのであった。
「「いざっ!」」
これにて忍者と猫少女の戦いの火蓋は落とされた。ちなみに、千影はこの時既に鏡神の力で緋袴の巫女装束へとコスチュームチェンジ済みであった。やはり便利である。
◇ ◇ ◇
千影は、まず相手の出方を見るべく後手に回る事を選んだ。忍者というのは隠密に動く存在。故に、自分から余り派手に攻撃に出るのは悪手なのである。
そんな千影の考えを空気の流れで悟ったのか、先手に出たのはたまであった。彼女はそのミニ丈の和服からスラリと伸びる生足を大地に踏み込むと、その勢いをバネにして一気に千影へと距離を詰
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