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神機楼戦記オクトメディウム
第6話 千影と決闘士:前編
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たのである。
 何故なら、彼女が今抱えている心の重しは、既に過ぎ去った事なのであるから。幾ら気の持ちようを変えようとも、過去をやり直す事など出来ないのだから。
 そして、姫子はその千影の言葉に多少引っ掛かるものを感じつつも、彼女に言う。
「そう、良かったよ。でも無理しないでね?」
「ありがとう」
 そのようなやり取りを行った二人は、ここで次なる話題に切り替えるのであった。
「それで姫子。その話は本当なのよね?」
「うん、それが大邪のやり方だってはっきりしたからね」
 そう、二人が今話題にすべき事は、他でもなく自分達の敵である大邪の存在であるのだ。
 そして、その内容は大邪に取り込まれたかぐらを騙して都合のいい手駒として利用していたという事なのである。
 人の心の隙を付いて利用して事を運ぶ。そのような非道なやり方を二人は許す訳にはいかなかったのであった。
「それなら、早く大邪に取り込まれた人達をすぐにでも解放しないと」
 そうもっともな解決策を千影は口にする。それは姫子も同意の所であるのだが、現実はそうはうまくいかないようである。
「でも、千影ちゃん。私達、大邪の本拠地がどこにあるか知らないんだよ?」
「そういう事よね……」
 その事実に歯噛みする千影であった。
「だから、今は敵が出撃してきた所を待ち受けて戦っていくしか方法がないって事だよ」
「ええ……」
 そうして二人は現実を受け止めるのであった。こうして今は特撮ヒーロー作品の序盤のように次々と出現する敵を迎え撃つしか出来ないのだと。
 そういう番組では見る者がその作品の世界観に入り込みやすくする為の、謂わば『慣らし運転』のような演出であるのだ。
 だが、現実ではそのような悠長な事などやってはいたくないだろう。実際に起こっているのは娯楽の為のパフォーマンスなどではなく、本気で破壊を世にもたらそうとする行為なのだから。
 しかし、それでも今の巫女二人は敵からの攻撃に対して動くという能動的かつ消極的なやり方をするしかないのである。
 なので、姫子はここでこう締め括るのであった。
「ここは……暫くの辛抱だよ、千影ちゃん」
「姫子、ありがとう」
 千影は姫子のこういう所が心強いのだとつくづく思う所であった。おちゃらけているようでいて、根はしっかり者という姫子がパートナーだというのは自分にも勇気が分け与えられる心持ちとなるのだ。
 そんな最高の相方である稲田姫子という存在に感謝しつつ、今日も屋上での憩いの昼食時間を終えるのであった。

◇ ◇ ◇

「それじゃあね、千影ちゃん♪」
「ええ、また明日ね、姫子」
 二人はそう言い合った後、放課後となった学校にて解散をするのであった。
 と、言うのも姫子の家は『稲田財閥』という立派な名家、つまり彼女はお金持ち
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