第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第26話 沙の中の銀河:後編
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くれて助かるぜ」
月で弾幕ごっこでの解決法を受けてくれたしな、そう魔理沙は思い返しながら言った。
「ほら小悪魔、借りてた本返すぜ」
「ありがとう……ございます……?」
本を返却口に出されて、小悪魔は応対をしながらも呆気に取られていた。やはり人ではなく悪魔でも慣れない光景には抵抗があるのだろう。
「それじゃあな」
そう言い残して魔理沙は図書館を去っていったのだった。
◇ ◇ ◇
今回魔理沙は騒動を起こしていないのだから、この場合『嵐が過ぎ去った』という表現は適切ではないだろう。
だがそれ以上に普段の彼女からは考えられない言動の連続であった為、やはり注目の中心となってしまったようだ。
「あ〜、驚いた。魔理沙さんの場合、落ち着いた言動が逆に異質ですよ……」
「同感ね」
勇美の言葉に、依姫も同意する。それを切っ掛けにしたのか、依姫はこんな事を切り出す。
「でも、普段の彼女の事も少し分かってあげる必要があると思うわ」
「と、言いますと?」
突然話題を振られ、勇美は何だろうと首を傾げる。
「勇美は彼女が努力家なんだから、本も強奪なんかしないで努力してお金を貯めて買うべきだと思っているのよね?」
「はい、当然です」
それが礼儀でありルールですよ、と勇美は付け加えた。
「確かに勇美のその意見は正論ね」
だがその後に「でもね……」と付け加える。
「努力は有限だという事を忘れないで欲しいのよ」
「努力が有限ですか……?」
勇美は依姫の思いがけない言葉に神妙な心持ちとなった。
「勘違いしてはいけないわ。これは『可能性』の事ではなく『機会』の事を言っているのよ」
「機会ですか」
勇美がその言葉に相槌を打つ。
「そう、機会。生きる者はいつ努力を満足に出来る環境を失うのか分からないものよ。特に時間が限られている人間はね」
「確かに……」
その依姫の出した理論に勇美はじわじわと納得し始めた。
「だから、彼女がお金を出して買うという努力を省いて、より知識の吸収に費やそうとする姿勢は理解してあげないといけないのよ。努力は有限なのだから」
「あなたの言う通りかも知れないわね」
そこに今まで二人の話を聞いていたパチュリーが入って来た。
「魔理沙の為に、考えてみる必要があるわね。そうね、例えばこの図書館の本を貸し出し制にするとか」
「それはいいわね。でも、あの子、返却期日は守りそうにないわよね」
「全くね……」
依姫の指摘に返しながらパチュリーはふと思った。
『あいつ』の力ならこの問題を解決出来るかも知れないと。自分と色の趣味が似ている『あいつ』なら。
最近音沙汰がないけど、今どうしているのだろう? そう思いを馳せるパチュリーであった。
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