第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第23話 勇美と恐竜:後編
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
勇美もその事は十分承知であった。機をてらっただけで太刀打ち出来る程、依姫という牙城は脆くはないのは周知の事実だからだ。
「ティラノ・メテオ、続いてお願い!」
上空に飛び上がった相棒に再び呼び掛ける勇美。するとそれに応えるように彼は身体の構造を変え始めたのだ。
ガチャガチャと金属音をならして手足を身体へと収納させ、形作られていったものは。
「まるで、隕石そのものね」
依姫の指摘通り、マックスは岩の塊のような形態へと変貌していたのだった。
「これぞティラノ・メテオの真骨頂よ! さあやっちゃって!」
そう勇美が呼び掛けると、上空で隕石の形を取ったマックスは地上目掛けて落下を始めた。
これを地面目掛けて叩き付ければ、さすがの依姫でもひとたまりも無いだろうと勇美は読んでの事であった。
(単純だけど、抜かりない攻め方ね……。でも、先程祇園様の力を解放したのが命取りだったようね!)
そう依姫は心の中で言葉を発すると、その祇園様の力を自身の身体へと寄せたのだ。彼のもたらす膂力があれば、この事態も打破出来るだろうと。
そして依姫は祇園様の力をその身体に込めて身構えた。これでいつでも相手を迎え入れられる準備は出来た。
「さあ、来なさい!」
そして意気込む依姫。そんな彼女に対して隕石と化した暴君竜は刻一刻と迫っていった。後は依姫にその身をぶつけた一撃をお見舞いするだけであった。
しかし……。
「あれ……?」
様子がおかしい事に最初に気付いたのは勇美であった。
隕石と化したマックスの所々から火花が爆ぜ始めたのだ。その接近速度も遅くなるどころか、もはや空中で制止している状態になっていったのである。
そして、極め付きな事が起こる。ピシピシとマックスは軋むような音をたて……。
削岩機を廃ビルに叩き込むかのような音と共に、彼は見事に爆散してしまったのだった。そして空には綺麗な花火が幾つも生まれたのだ。
「……」
「……」
勇美本人も依姫も呆気に取られて言葉を発せないでいた。対して事情を良く知らない子供達は「きれーい♪」とその花火を見てはしゃいでいた。
「依姫さん、これは……」
「……恐らく八意様が何かしたのね」
遠い方向を見ながら二人はそう言い合った。
──あの人は一体何をしてくれるんだろう、子供達を楽しませるだろうけど、自分の勝負に水を指してくれてどういうつもりだと勇美は思った。
だが、彼女には別の理由も頭に浮かぶのだった。
──それは勇美が依姫と勝負して完全な形で負けたらこの先自分の心を引きずり続けるだろう事を懸念しての作戦だったのではと。
そう、勇美は成長し続けているが、まだ師である依姫と戦うには早いのだろう。勇美が更なる成長をして本当に依姫と渡り合える時が来るまでこういう形で勝負を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ