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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第23話 勇美と恐竜:後編
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テゴの力はここからは使いませんから」
 言って勇美は剣山のような風貌を見せつけていた彼を解体した。当然金山彦命の力ではなく勇美自身の意思で。
 そうして再び姿を消したマックス。そこで勇美はまた心の中で念じる。
(愛宕様に天津甕星様、最後に私に力を貸して下さい)
 最後に……。そう勇美は心の中で念じた。この次の手がこの勝負において最後になるだろうと肌で感じての事であった。
(次はどう出てくるのかしら?)
 依姫は期待しながら待ち構えた。そこに不安はなかった。
 ──勇美はよくここまで私と張り合ったと。だが、まだ未熟である。だから私が負ける事はないだろう、そう思っていたからである。
 そんな思いを依姫が馳せている間にも、勇美の側には彼女の最後の想いを乗せて鋼の意志が寄り集まっていたのだ。
 次々に形作られていく勇美のこの勝負最後の化身。その様相は今までとは違っていた。
(……まだ形成が続いているのね)
 そう依姫が勘ぐる通り、今までよりもマックスの身体のパーツが寄り集まる時間がこれまでよりも長かったのである。
 だが、物事には必ず終わりがあるもの。その長きに及んだ収束も完成の時を迎えたのだ。
 そこに存在していたのは。
「ティラノサウルスね……」
 依姫はそう呟いた。強靱な顎と四肢を持つ暴君の名を冠する恐竜の王者の姿であった。 圧倒的な威圧感。それを見ていた者は皆驚いていた……勇美を含めて。
「うわあ、マッくんの姿が凄まじい事になっちゃった〜、マジビビるわぁ〜、たまげたなぁ……」
「……自分でおののいてどうするのよ」
 そんな間の抜けた暴君の主に対して、依姫は頭を抱えながら突っ込みを入れた。
「だって、自分でもここまでなるとは思っていなかったんですよ〜」
「それで、これからどう攻めてくるのよ?」
 呆れながらも依姫は勇美にどうするのかを促す。
「よく聞いてくれました。この形態は【降符「ティラノ・メテオ」】って言いましてね」
「メテオ……」
 依姫は呟いた。それは確か『隕石』を意味する言葉だったと。
 隕石、それは空から地上に降り、天変地異を起こして恐竜の住めない環境を作り出して恐竜時代を終わらせた産物である。
 それを持ち出すとは、まさに勇美がこの勝負の最後に持って行く為の決意の現れだと窺えたが、一体これでどういう攻め方をするというのだろうか。
「まあ見ていて下さいね、それじゃあティラノ・メテオ。頼んだよ!」
 そう勇美が命じると、その暴君は逞しい脚と腰に力を込めると、その重厚な見た目に反して身軽に空高く飛び上がったのだ。
「跳んだ!?」
 さすがの依姫も、この事態には驚いてしまった。だが、すぐに平静を取り戻し付け加えるように言った。
「意外性だけではどうにもならないわよ」
「ええ、分かっています」
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