第五章
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「頑張ろうな」
「それじゃあね」
友人達も涼花の言葉に頷いた、そうしてグラウンドに出たが涼花はこの時身に着けていたアクセサリーは全て外していた。
その涼花にある日田所はふと学校の中で会った時に尋ねた。
「お前いつも爪は切ってるな」
「爪ですか」
「ああ、そしてネイルアートもしていないな」
他のメイクはしているが、というのだ。
「それはどうしてだ」
「あたしの家農家で」
それでとだ、涼花は答えた。
「それで、です」
「しかもな」
「農業科ですから」
この学校にいるからだというのだ。
「部活もありますし」
「爪を伸ばしていると邪魔だからか」
「それに危ないですから」
このこともあるというのだ。
「ですから」
「それでか」
「ひっかけて剥がれるんですよね」
爪を伸ばして肉体労働やスポーツをしていると、というのだ。
「そうですよね」
「そうだ、危ないのは事実だ」
「凄い痛そうですし他の娘も引っ掻いたりしますから」
こうしたことも危ないからだというのだ。
「だからです」
「爪はいつも切っているか」
「そうしてます」
「いいことだな」
「いいことっていうか当然ですよね」
涼花の返事はクールなものだった。
「そうですよね」
「農業をやってるとだな」
「あたし自身のことでもありますから」
それでというのだ。
「気をつけています」
「いいことだな、ならな」
「それならですか」
「このまま爪は短くしていろ」
「言われるまでもないですから」
「その言葉は余計だ」
今の一言はとだ、田所は涼花に少し苦笑いになって返した。
「そこは」
「そうですか」
「だがお前という人間もわかった」
「あたしもですか」
「ああ、服装や髪の毛がそうでもな」
それでもというのだ。
「中身は意外としっかりしているな」
「そうですかね」
「ああ、なら安心だ」
田所は涼子に笑ってこうも話した、そしてだった。
涼花から別れた後で他の生活指導担当の先生達に話した。
「ああした娘は大丈夫ですよ」
「平松みたいな娘はですか」
「そうですか」
「外見よりも中身で」
それでというのだ。
「中身がしっかりしているなら」
「大丈夫」
「そうだっていうんですね」
「はい、そうです」
田所は太鼓判を押した、そして実際に涼花は高校卒業まで授業も部活も課外も真面目であり実家に戻っても結婚しても外見はともかく中身はしっかりとしていた。そうしてよき市民として人生を送った。その人間性に相応しく。
不良でも 完
2019・11・17
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