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不敗将軍
第四章

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「フーシェ殿が亡命を勧めたそうだな」
「パスポートまでお渡ししたとか」
「そのうえで、です」
「フランスから出る様に言われたそうです」
「フーシェ殿は確かに策謀家だ」
 このことはフランスだけでなく欧州各国でも有名である。
「タレーラン殿と同じくな」
「左様ですね」
「あれだけ危険な方はおられないです」
「タレーラン殿と並んで」
「皇帝陛下以上の政治力と知力をお持ちで」
 フーシェだけでなくタレーランもとだ、ダヴーにネイのことを秘かに告げに来たかつてのダヴーの部下達は言った。
「政治的な倫理観はお持ちでないです」
「それも全く」
「手段は選ばれないですし」
「とかく危険な方です」
「それは政治家としてであってだ」
 ダヴーはフーシェのことをさらに話した。
「私人としてはな」
「決してですね」
「非道ではないですね」
「立派な教師だったといいますし」
「あの人から学んだ人は皆今もあの人を敬愛していますし」
「だからですね」
「私人としてだ」
 その立場からというのだ。
「ネイ殿に好意を持っておられてな」
「助け舟を出された」
「パスポートをお渡ししてですね」
「亡命を勧められてのですね」
「そうされた、だがフーシェ殿もわかっておられた」
 亡命を勧めた彼自身もというのだ。
「実のところはな」
「ネイ殿は亡命されない」
「逃げられない」
「フランスに留まられて」
「そしてですね」
「裁判に問われるなら受けられる」
「ネイ殿は勇敢だ」 
 ダヴーはネイのことについても話した。
「しかもただの勇敢さではない」
「勇者の中の勇者」
「そう言われていますね」
「そこまでの方だと」
「そうだ、誇り高い真の軍人であり勇者だ」
 ネイという男はというのだ。
「だからだ」
「逃げられず、ですね」
「向かわれるのですね」
「ご自身の運命に」
「そうされますか」
「そうだ、そして私は彼の友人だ」
 ダヴーは毅然として言った。
「だからだ」
「まさか」
「まさかと思いますが」
「閣下は」
「彼は裁判にかけられる」
 絶対にというのだ。
「国王によってな、裁判には弁護人が必要だな」
「はい、裁判にかけられれば死刑は確実です」
「国王は執念深い人物です」
 ルイ十八世、彼はというのだ。
「皇帝陛下の下で活躍したあの方を許されないです」
「しかも裏切ったとも思われています」
 ナポレオンがフランスに戻った時にネイはルイ十八世に命じられナポレオン討伐軍の司令官として出撃した、だがその軍勢ごとナポレオンに投降したのだ。
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