第七章
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「な、何だあの敵は」
「どれだけ低く飛ぶんだ」
「急降下爆撃があそこまで当たるのか」
「海での戦いだぞ」
「動く軍艦が相手だぞ」
「それであそこまで正確な攻撃をするのか」
「戦闘機も何という強さだ」
零式艦上戦闘機、零戦に乗る彼等のことも驚きの対象だった。
「まるで悪魔だ」
「悪魔の様な強さだ」
「戦艦が為す術もなく沈んでいく」
「こちらの戦闘機は全く歯が立たない」
「航空機の性能だけじゃない」
「乗員の質が全く違う」
「どうしたらこれだけの精鋭を持てるんだ」
敵である連合艦隊の誰もが唖然となった。
「我々のパイロットでは無理だ」
「とても歯が立たない」
「強さが違う」
「どうにもならない」
その強さに驚くばかりだった、その声を噂で聞いてだった。
山口は空母飛龍の艦橋で腕を組んで言った。
「当然のことだ」
「我等の強さは」
「それはですね」
「そうだ、どれだけの訓練をしてきたか」
その訓練の結果だというのだ。
「それを思うとな」
「今の強さもですね」
「当然のことですね」
「そうだ、驚くことではない」
特にという言葉だった。
「全くな」
「それだけの訓練をしてきた」
「今の強さに見合うだけの」
「だからですか」
「戦闘機隊は次々に撃墜し」
連合軍を全く寄せ付けない、零戦の性能もあるがパイロット達の腕がとにかくいいからそうなっているのだ。
「艦攻の攻撃も凄まじく」
「急降下爆撃の命中率は八七パーセントです」
「普通は二桁いけばいいですが」
「それがですね」
「そうだ、全てだ」
まさにとだ、山口は言うのだった。
「訓練の結果だ」
「それだけの訓練をしてきた」
「それ故にですか」
「驚くことはない」
「そうだというのですね」
「そうだ、ではだ」
山口はさらに言った。
「このままだ」
「戦っていきますね」
「訓練を活かして」
「そうしていきますね」
「皇国の為にな」
まさにとだ、こう言ってだった。
山口は海軍航空隊、機動部隊のそれを率いて大戦序盤に見事な活躍を見せた。
不幸にして山口も彼が鍛えた精鋭達の多くのミッドウェー海戦で戦死し訓練の成果は失われた、だが。
帝国海軍航空隊の地獄と言うにもまだ甘い訓練の結果である圧倒的な強さのことは戦史に残っている、その強さは精強で知られた日本軍の中でも特筆すべきものだった。このことは確かなことである。訓練が精強な軍隊を作ることは。
地獄の訓練 完
2019・12・14
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