第五章
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「いいな」
「はい、それじゃあ」
「その七戦の間抑えます」
「七戦だけって思えば楽ですね」
「それ位ならあいつも抑えられますよ」
「確かに凄い奴ですが」
「それだけなら」
広島投手陣は古葉に笑って答えた、そしてシリーズに赴き。
とにかくブーマーは徹底して内角の落ちる球で攻めた、そうしてとにかく打たせなかった。
だがそれでも阪急は強かった、ブーマー以外の野手達も投手陣も揃っていた、その為試合は古葉が言った通り七戦までもつれたが。
最後には広島が勝った、古葉は見事胴上げ監督となった。
ブーマーは阪急側からのベンチでその胴上げを見て苦い顔で呟いた。
「僕が打てていけば」
「そう思うんやったらな」
監督の上田がそのブーマーに話した。
「何故打てんかったか」
「そのことをだね」
「自分で調べて突き止めてな」
「なおしていくことだね」
「そういうことや」
「わかったよ、ボス」
ブーマーは苦い顔で上田に応えた、そのうえでチームメイト達と共に球場を後にした。
古葉は日本一になった後でコーチ達に祝いの場で話した。
「本当にブーマーをほぼ完全に抑えたな」
「シリーズ打率一割六分七厘でしたね」
「本当に打たせませんでしたね」
「弱点を徹底的に衝いて」
「そうしましたね」
「それで勝ったな、しかしな」
こうも言うのだった。
「若しそれをしなかったらな」
「うちは負けてましたね」
「阪急に」
「確実にそうなっていましたね」
「相手の主軸を見極めてな」
そうしてというのだ。
「それを徹底的に封じる」
「それはペナントでは長いので難しい時もありますが」
「相手も百何十の試合の中でわかってきますので」
「ですがシリーズなら」
「短いですから」
「気付かれにくいし気付いてもな」
相手がそうなってもというのだ。
「それでもな」
「改善するまではですね」
「時間がかかりますし」
「それならですね」
「封じられる、シリーズは本当にな」
それこそというのだ。
「相手の主軸の弱点を突き止めてな」
「封じることですね」
「それが勝つ秘訣ですね」
「そういうことだ」
こう言うのだった、そうして古葉は一杯飲んだ。考えに考え調べ抜いた末で得た勝利の美酒は実に美味いものだった。
短期攻略 完
2019・10・14
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