暁 〜小説投稿サイト〜
誰が恐れるか
第二章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「そしてこれまでの歴史ではだ」
「オーストリアやロシアに翻弄され」
「トルコも長い間居座っていました」
「先のドイツもあり」
「ブルガリアやルーマニア、ギリシアも介入してきて」
「常に惨たらしい戦争が繰り返された」
 それがユーゴスラビアの歴史だったというのだ。
「血が血を呼びだ」
「殺し合ってきました」
「憎しみ合い」
「そうした歴史でした」
「それがこの国の歴史でした」
「そのユーゴスラビアを治めることだ」
 まずはというのだ。
「それが先決だ」
「共産主義や資本主義よりも」
「まずはそのことですね」
「イデオロギーとして使えるから共産主義である」
「それだけですね」
「そうだ、コミンテルンよりもユーゴスラビアだ」
 優先すべきはそちらだとだ、チトーは断言した。
「この国をどうすべきかだ」
「もう惨たらしい殺し合いはさせない」
「この国にいる全ての民族を争わせない」
「そのことこそが重要ですね」
「何といっても」
「そうだ、スターリンが何を言ってもだ」
 それでもというのだ。
「私は何ということはない」
「大事なのはあくまでユーゴスラビアであり」
「この国はどう平和に治まっていくか」
「そのことが大事ですね」
「何よりも」
「その為にはモスクワの言うことも聞いておられない」
 スターリン即ちコミンテルンのというのだ。
「だからいいな」
「はい、自立ですね」
「ソ連から離れ」
「我々は独自路線を歩みますね」
「ユーゴスラビアの為に」
「そうする、スターリンに逆らってユーゴスラビアが崩壊するなら」
 それならばというのだ。
「私はユーゴスラビアを選ぶ」
「では」
「スターリンが何を言ってきてもですね」
「ユーゴスラビアを優先しますね」
「そうするだけだ」
 こう言ってだ、チトーはスターリンに逆らってでもユーゴスラビアを平和に治めることを選んだ、そうして独自路線を歩むと。
 スターリンは激怒して二つのことを決めた。
「ユーゴスラビア共産主義者同盟をコミンフォルムから除名する」
「追放しますね」
「彼等を」
「そして友好相互条約もだ」
 これもというのだ。
「破棄する」
「あの国との関係を完全に断つ」
「そうしますね」
「軍を送れるか」 
 ここでスターリンは部下達にこのことを問うた。
「それはどうか」
「やはり大戦の傷が大きいです」
「また今は東欧諸国を支配下に置くことで手が一杯です」
「ユーゴスラビアに兵を進めることは無理があるかと」
「どうしても」
 軍人達はスターリンにすぐに答えた。
「それにあの国は山岳地帯です」
「攻めるに難しい場所です」
「かつてドイツ軍もあの地では手を焼きました」
「またチトーはゲリラ戦術の名手で
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ