第30節「鏡に映る、光も闇も何もかも」
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
がっている。
「…………ッ」
その凄惨な光景に、マリアは血が出る程に唇を噛みしめる。
国や人々を護る為に戦う彼ら兵士に、罪は無いはずなのだ。
今この場に於いて、彼らから見た自分達は「ノイズを操る力を持ったテロ組織」であり、自分達を襲ってくる兵士の全てが権力の犬ではなく、人々を脅かす脅威に立ち向かう気高き者達も含まれているのだ。
それでも、彼らに情けをかけることが許されない。
邪魔する者は全てなぎ倒して進まなければ、ナスターシャが唱えた人類救済の道には届かないのだから……。
そんな思いが、誰より優しいマリアの心を縛り付け、締め付けていく。
「こんなことがマリアの望んでいることなの? 弱い人達を守るために本当に必要なことなの?」
モニターに映し出される地獄絵図を前に、調はマリアに問いかける。
「──ッ」
「……」
「何とか言えよ……答えろよ、マリィッ!」
何も答えないマリア。
彼女の沈黙を受け、調は操縦室を飛び出した。
「──調ッ!?」
飛び出していく調を追いかけ、切歌も操縦室を出る。
「やれやれ、やはり彼女もまだまだお年頃……というわけですか。仕方ありませんね」
そう言って、ウェル博士も後に続く。
(ウェルの目が離れた……今だッ!)
ツェルトは操縦桿を握るマリアを振り返り、そして操縦室から格納庫へと向かって行った。
切歌が追い付くと、調はドアを開けていた。
「何やってるデスかッ!?」
「マリアが苦しんでいるのなら……私が助けてあげるんだッ!」
「──調ッ!」
肩を掴もうとした手を振り払い、調はエアキャリアを飛び降りる。
直後、切歌の耳に届いたのは彼女の聖詠だった。
「──Various shul shagana tron──」
薄紅色の光に包まれ、調はシュルシャガナのシンフォギアを纏い、米国の哨戒艦艇へとスカイダイブしていく。
「調っ!」
「連れ戻したいのなら、いい方法がありますよ」
肩に手を置かれて振り返ると、そこには善からぬ笑みを浮かべたウェル博士が立っていた。
ウェル博士は切歌に、いつもLiNKERを注入するのに使っている無針注射器を手渡す。
そこにはいつもの黄緑色ではなく、赤い薬品が入っていた。
「LiNKER?」
「いいえ、これはAnti_LiNKER。適合係数を引き下げる為に用います。その効果は折り紙つきですよ」
以前、廃病院での試験運用で得たデータを元に更に改良を重ね、主に即効性を高めてきたものがこの液体状の新バージョン。開発コード『ALi_model_K0074_L』である。
注射器を受け取っ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ