第30節「鏡に映る、光も闇も何もかも」
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ロンティアに集めて君臨する……そんな腹積もりだったんだろうな」
「フィーネならやりかねないな……アイツはそういう女だ」
クリスは渋い顔で呟く。
純も、あの時のフィーネの行動にようやく納得がいったようだ。
「私欲にまみれた者達が舵を握る方舟か……。どちらの手に転ぼうが、ロクなもんじゃないな」
「つまり、米国政府は自分達だけフロンティアに乗って、地球外へトンズラしようとしていたって事か……」
「国に生きる民さえをも見捨てて逃げるなど……恥知らずなッ!」
風鳴の血を引く三人が腕組み、呆れ、怒りを滲ませる。
国とは土地ではなく、その土地に生きる民である。
それを信条とする翔や弦十郎、翼にとって、その計画は身勝手極まりない邪なるものに思えた。
「F.I.S.は、救える人間の分母を増やすことが目的だ。ジョセフ・ツェルトコーン・ルクスはそう言っていたが……」
「翔くん、昨日彼から聞いた情報の通りなら、ナスターシャ教授は今、床に臥せっているのよね?」
「ああ。今、F.I.S.の指揮権はウェル博士にある……そう聞いている」
「だとしたら、急がないと。自分が英雄になる日を夢に見続けてきたウェルくんは、きっと野心を抑えられなくなっているはず……。フロンティアが浮上すれば、彼の野望が現実のものになってしまうわ!」
その時、警報のアラートが鳴り響く。
「ノイズのパターンを検知ッ!」
「米国所属艦艇より応援の要請ッ!」
モニターに映る、米国の哨戒艦。
船上では、既に米軍とノイズが交戦を始めている。
「っ!」
「この海域から遠くないッ! 急行するぞッ!」
「応援の準備に当たりますッ!」
「クリスちゃん、先行くよッ!」
翼と純が発令所から駆け出していく。
「わたしも……」
「響──ッ」
「死ぬ気かお前ッ!」
翼達に着いて行こうとする響の肩を、クリスが掴んで止める。
翔が口を開くより先に、クリスの手は響のネクタイを掴んでいた。
「ぅ……」
「ここにいろって──な。お前はここからいなくなっちゃいけないんだからよ……」
クリスの脳裏に浮かんでいるのは、攫われた未来の顔だ。
帰って来た時、ここに響がいなかったら、彼女が一番悲しむのは目に見えている。
「頼んだからな」
響のネクタイを元に戻し、クリスは翔の方を見てそう言った。
そして、翼と純の後を追って走り出す。
「響……分かるな?」
「うん……」
発令所を出ていくクリスの背中を、翔は響と共に見送った。
ff
「うわあッ!」
「ぐ……あああッ!」
「うう、ぐうッ!」
ノイズによって、次々とやられていく海兵隊たち。
それでも懸命に戦っているが、甲板では既に地獄のような光景が広
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