第30節「鏡に映る、光も闇も何もかも」
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「これは……」
『6年前のネフィリム起動実験、暴走したネフィリム暴走を食い止めようとしたセレナは、絶唱の負荷と崩壊した施設の火災で負った大火傷で、ほぼ助からないと判断された。だが、俺が無理を言って冷凍保存させる事で、何とかギリギリ生命を繋いでいたんだ』
「まさか、これ全部、治癒の力を持つ聖遺物に関する資料なの!?」
『ああ、そうだ。──諦めきれなかったんだよ、あの子の担当医としてな……』
サングラスの奥で読み取りにくいが、アドルフ博士の表情は、どこか悔しげだった。
セレナの治療は、現代医学では不可能だった。
だから彼は、あらゆる文献を漁り、彼女を治療する方法を模索したのだろう。
それを横からかっさらわれたのだ。彼の悔しさは語るまでもない。
『西洋圏の聖遺物は、独国やロシアなんかの研究機関、それにパヴァリア光明結社とかいうカルト組織なんかも手を伸ばしてるだろうから面倒な事になる。だから東洋方面、特にフィーネがいる日本を中心に絞ってみた結果、俺が行き着いた答え。それが──』
「生命を司り、死者すら蘇らせるといわれる生弓矢だった……」
『そうだ。まあ、現地でアクシデントが発生し、取引がおじゃんになったって聞いた時は、あまりの悔しさに荒れたもんだ。……まさか、子供の胸ん中に突き刺さってるとは、思いもよらなかったがな』
「その資料がウェルくんに奪われた、と。ウェルくん達は、奪った生弓矢の欠片で何を……」
『コールドスリープさせていたセレナのカプセルも、一緒に持ってかれちまってたよ』
そう言って、アドルフ博士は生弓矢の関連資料を拡大する。
拡大された資料の隣には、経年劣化で読めなくなった部分まで解析した翻訳が付いている。
『おそらくマリア達だろう。フロンティアを起動させた後、セレナの傷を癒して蘇生する。生命力を活性化させる“命の旋律”なら、不可能な事じゃない』
「でも、あっちにはウェルくんがいるのよねー……」
『ろくな事を考えないだろうからな……。あの英雄バカは』
科学者2人は溜息を吐いた。
それだけウェルの人となりは知っているのである。
もっとも、了子はフィーネの記憶から知っているだけなのだが、それでも呆れるほどの自意識過剰っぷりなのだから仕方がない。
そして、二人の悪い予感は当たろうとしていた……。
ff
『じゃあ、小日向は無事なんだな!?』
「ああ。だが、ウェルの野郎が何か企んでるらしい。取り返しのつかない事になる前に、なんとかそちらへ返せればいいんだが……」
その夜、ウェルが研究室へ篭った隙にエアキャリアの外へ出て、ツェルトは翔に未来の無事と組織の現状を伝えていた。
認めるのは癪だが、もはや自分一人でどうにかなる範疇ではなくなった。自分でも動ける範囲
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