第六十一話 大森林の先
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「シチューじゃなくて、クラムチャウダーなんだけど……まあ、似たような物か」
『ホンビノスガイ』という、ハマグリよりも肉の大きな貝がたっぷり入ったクラムチャウダーを、ティファニアは大盛りで持って来て手渡しした。
「はい、マクシィ兄さん」
「ありがとうティファニア。立って食べるのは品が無いから、あのテーブルを囲って食べよう、ティファニアも自分の分を持ってきなさい一緒に食べよう」
「は〜い」
ティファニアはパタパタと駆けて行った。
「……」
ティファニアがクラムチャウダーを取りに行っている間、マクシミリアンが食堂内を見渡した。
学術団の面々や本国から派遣された家臣達が、ささやかなパーティーを楽しんでいるが、目当ての人物は見当たらない。
(シャジャルさんは、今日も『あそこ』か)
ティファニアの母、エルフのシャジャルはパーティーに参加していない。
マクシミリアンはパーティーに招待をしたが結局来なかったようだ。
シャジャルは、毎日の様に砦内に設置された礼拝堂へ足を運び、大寒波に見舞われたアルビオンの民衆の為に毎日始祖ブリミルへ祈りを捧げていた。
マクシミリアンは、報告書でアルビオンの惨状はある程度知っていて、アルビオンを捨てた元アルビオン国民をヴァールダムを経由して新世界に移民として受け入れていた。
最初は、受け入れる予定は無く、また外国人を移民として受け入れるのには抵抗があった。だか、そうも言ってられない状況に陥ったからだ。
建国当初、新世界の存在をぼかしながらトリステイン国内でのみ、移民を募集したが余り集まらなかった。
原因は皮肉にもエドゥアール王とマクシミリアンが善政を布いた事によって、故郷を捨ててまで新世界へ行こうとする者が出なかったからだ。
広大なヌーベルトリステインの土地に経営しようにも労働力不足で、いきなりマクシミリアンの事業は頓挫しかかった。が、おりしも大寒波がハルケギニアを襲い、アルビオンは空前の被害を出した。
悲劇の報を聞いたシャジャルは、礼拝堂に毎日通っては、終日祈りを捧げるその姿に、マクシミリアンに仏心が出てしまい、自分の主張を曲げアルビオンからの難民を受け入れる様になった。
今ではヌーベルトリステインの人口は、トリステイン人よりアルビオン人の方が多くなってしまった。
「よろしいでしょうか? 殿下」
「ミス・ヴァリエール、今日は来てくれてありがとう」
今度はエレオノールが現れた。
公の場では、『義姉上』ではなく『ミス・ヴァリエール』と呼ぶようにしている。
「殿下は、今日は飲まれないのですか?」
「今日は『連れ』が居るから飲まないよ」
そう言って、背伸びをしながら鍋からクラムチャウダーを
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