青い変なお客様
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「あ、お客さん。出来ましたよ。キリマンジャロ」
「その〜。お嬢さん。お名前は?」
青山と名乗った女性は、ハルトのコーヒーを無視して、可奈美へ顔を寄せる。
可奈美は口角を吊り上げながら、「衛藤可奈美です」と名乗った。
青山ブルーマウンテンさんは「可奈美さんですか……」と頷く。
「腕の筋肉がすごいですね……とてもココアさんたちと同じ世代とは思えません……」
「あ、あはは……鍛錬してますから」
「鍛錬? ……普段は普通の中学生。だけどその正体は特別な力を持つ魔法剣士……降りてきました!」
青山さんは、大急ぎでテーブル席に戻る。鞄から原稿用紙を取り出し、
「来ました来ました! 降りてきました!」
さっきまでののほほんとしていた表情の女性は、嬉しそうにカリカリと書いている。
「決めました! これはいいですよ!」
ある程度書き終えた青山さんは、その原稿用紙を掲げる。
「ようやくヒロインの設定ができました。思い人を探し求めて各地を転々と渡り歩く、流浪のヒロインが、出会った主人公と衝突を繰り返しながら成長していく……」
「……」
「……」
気まずい表情のハルトと可奈美は顔を合わせる。
さらに、この青山さんは続く。
「主人公は……そう、同じく旅する……」
「あの!」
これ以上真実を当てられると怖くなってきたハルトは、青山さんを食い止める。
「もしかして青山さんって、作家さんか何かですか?」
「ええ。私、小説家なんです」
にっこりと青山さんは微笑んだ。
クリームな色の髪を手で梳かしながら、肩にかけている鞄より、重そうな本を取り出した。
茶色の表紙に、細かく書かれたその表紙は、ハルトには見覚えもないものだった。
「うさぎになったバリスタ?」
「映画化もされました」
「ハルトさん知らないの?」
可奈美が尋ねた。
ハルトが頷くと、可奈美は唖然と口を開けた。
「嘘でしょ? 私の地元でも友達、大人気だったよ」
「一年以内の映画だったら俺旅の途中だよ」
「一昨年やってたよ。……ってことは、お客さん、青山ブルーマウンテン?」
「あれー?」
「今さっき自己紹介してもらったところだけど?」
青山さんは目を丸くして、口を押える。
ハルトは、軽く失礼なことを言い出す可奈美にそう付け加えた。
可奈美はそれを無視し、
「あの映画、本当に面白かったです! 特に、息子が嵐の中で弾き語りをしながらお金稼ぐシーンが!」
「あら? 序盤のそこを好きになる人って珍しいですね」
「そうですか? うーん。……まあ、私って、好みが人とは少しずれているみたいだし、そういうのは仕方ないかなあ」
「ズレてるの?」
「見てない俺が言
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