父らしく、父らしくなく
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<海上>
辺りが闇に包まれ、甲板では夜番の水夫数名のみが作業している中、ティミーが漆黒の海を見つめ物思いに耽っている。
「よう、我が息子!悩む姿が板に付いてるな!」
そこに陽気な声でリュカが現れた…手にはワインと、2つのグラスを持って。
「い、いえ…悩んでいる訳では…」
生真面目に返答するティミー…彼らしいと言えば彼らしい。
そんな息子を見て苦笑しながらグラスを渡すリュカ。
「と、父さん!お酒は………」
自らのグラスにワインを注ぎ、軽く一口飲むリュカ。
「まぁ付き合えよ…僕の父さんは息子と酒を飲み交わすことなく他界したんだ………僕だって、何時ベットを共にした女性に刺し殺されるか分からないんだからさ」
「ふふふっ…そうですね」
二人とも笑いながらワインを少しずつ飲み、甲板の手摺りにもたれ海を見つめてる。
「……アルルは…良い娘だ。僕は彼女のお陰で救われた…」
「救われた!?」
「うん…バハラタ東の洞窟でカンダタに再会し、アイツが命乞いをした時に…僕はアイツを憎み、殺してやりたい気持ちでいっぱいだった!シャンパニーの塔でアイツ等盗賊団の悪行を目の当たりにして、許せなくなっていたんだ…」
「そんなに酷かったんですか………改心するなんて言葉、信じられるわけないですよね…」
「いやティミー…それは違うんだ。もし何らかの確証があり、カンダタが改心する事が確実であっても…僕はあの時殺してやりたかったんだ!」
「父さん………」
「今なら自分でも分かる。あの時、自身の欲求の為にアイツを殺そうとしたんだ!…誰の為でもなく…」
珍しく苦しそうに語るリュカに、ティミーは言葉を掛けられない…
「だからお前がアルルの事を好きになったと知った時、嬉しかった…自分の事の様にってのは言い過ぎかもしれないけど、本当に嬉しかったんだ」
先程とは一転して明るい表情になるリュカ…しかし直ぐに眉間にシワを寄せ悩み出す。
「でもねティミー…ある思考に達したら、喜んでられなくなったんだ!」
「え!?何ですか急に!?…まさか身分の壁とか言わないですよね!?」
「あ゛!?ぶっ飛ばすぞコノヤロー!身分とかそう言うの、考えた事も無い!」
ビアンカを巻き込み、この世界へ連れてきた事に激怒した時と同じ口調で怒るリュカ。
「す、済みません…」
「ふぅ…そうじゃなくてさ!お前の性格の事なんだよ…」
「はぁ?…僕の…ですか?」
「うん。お前は『バカ』が付く程真面目な性格だから、互いの住む世界が違うと言って、諦めちゃうんじゃないかなって…」
「住む世界って…やっぱり身分の事じゃ「じゃなくて!」
リュカは思わずティミーをヘッドロックする…が、力はそれ程入れてない。
「物理的に違う世界に住んでいるだろ!此処は僕等の住んでいた世界じ
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