第29節「英雄故事」
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身寄りが無くて、泣いてばかりのわたしたちに優しくしてくれたマリア……。弱い人たちの味方だったマリア……なのに──」
力をもって貫かなければ、正義を成す事など出来やしない。
その言葉がマリアの本心でないことくらい、二人とも分かっている。
あのツェルトが最後まで認めなかったんデス。
間違いなくマリアは、自分の心に嘘ついてるデス。
それでも……それは、マムが諦めてしまった人類の救済を実現させるため。
それが分かっているからこそ……歯痒いデスよ……。
「……調は怖くないデスか?」
「え……?」
今度は調がアタシの方を向いた。
「マリアがフィーネでないのなら、その魂の器として集められたあたしたちがフィーネになってしまうかもしれないんデスよ……」
「よく……わからないよ」
「……それだけッ!?」
「どうしたの?」
「──ッ」
これ以上は、調に隠し事をしているとバレてしまう。
アタシは洗濯物を置いて、その場から逃げるように走り去る。
「切ちゃん!」
後ろの方で調が呼んでいたデスが、アタシは立ち止まらずに走った。
部屋へ戻ると、膝を抱えて座り込む。
「アタシがアタシでいられなくなったら……アタシは、調に忘れられちゃうデスか……?」
想像するだけで、震えが止まらない。
もしもアタシが消えてなくなって、世界も滅びてしまったら……アタシが生きていた証は何処にも残らなくなってしまうデス……。
「……だったら……せめて、そうなる前に……」
机に向かって座ると、適当な大きさの紙に握ったペンを走らせる。
これからきっと、戦いはどんどん激しくなる。
あの力まで使えるようになっていたという事は、アタシの中のフィーネは近いうちに必ず目覚めるはずデス……。
だったら、そうなる前に──
【はいけい、みなサマへ……】
皆への感謝を、書いて残しておかなくちゃ。
それがきっと、アタシが生きた証になるのデスから……。
そう、みんなに内緒の……お手紙デス。
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