疾走編
第二十九話 新任務
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わね冷静さ、その落ち着きっぷりを気に入ったらしい。聴取の時の印象が良かったんだな。信頼出来そうな者に頼みたいらしい。でないとこれ以上は協力出来ないと言うんだ。事が済めば君と友達になりたいそうだ」
「友達、ですか。…司法取引、という事は皆亡命、という事で落ち着く訳ですか」
「そうだ。誰も損しないからな」
「損をしない?麻薬密売の件も発表しない、と?」
「公表はする。我が軍に不届き者がいた、という形でだ。実際にそうだろうからな。どのレベルまで追及するか、というのはまだ決まっていないし分からない。決まっていないからこそ核心を手に入れなくてはならないのだ」
「拒否は出来ないのですか」
「出来ない。君にはフェザーンに行ってもらう。たしかキンスキーグループのご令嬢と婚約していたな?
婚前旅行という訳だ、羨ましい事だ」
「…彼女を、キンスキー兵曹を巻き込んだのですか」
「巻き込んだ訳ではない。表向きは全くそうだからな。軍の福利厚生のパターン採取に協力、任務は君との旅行、という事になっている。後方勤務本部からの要請だ、彼女は喜んでいたそうだよ」
「フェザーン駐在の高等弁務官府へは」
「行ってはならない。当然ながら、彼等にも知らされていない任務だからな。あくまで旅行だ。任務の人選は君が行いたまえ。必要な物はキャゼルヌが用意する。以上だ」
シトレ中将は出て行った。入れ違いにヤンさんが入って来た。
「先輩、あのマスクの臭さ、何とかならなかったんですか。知ってて私に被らせたんでしょう?」
「お久しぶりです、ヤン中佐。私役は中佐だったんですね」
「そうだよ。久しぶりだね、ウィンチェスター。…ちょっと、シャワーに行ってきます、じゃあ、また後で。ああ、臭い」
ヤンさんは青い顔をしながら参事官室を出て行った。
「しかし、エリカまで巻き込むとはひどいじゃないですか」
「仕方ないだろう、他に思い付かなかったんだ。何しろお前さんを指名したのはカイザーリング氏だからな」
「でしょうけど…でも、自分の妻なんだし、そこはバーゼルが頼み込むのが筋じゃないですか?」
「中将によると、バーゼルは亡命後のこちら側での身の振り方にしか興味がないらしい。健気だよ、カイザーリング氏は」
「今更ですが、大佐も調査に協力しているのでしょう?預かり知らぬ事だ、とかカッコつけてましたけど」
「非公式の内容だからな。参事官、ってやつは何でも屋みたいな物なんだ。橋渡し、オブザーバー、助言者的立ち位置さ。これでも俺は人徳、人望がある方だからな、こういった任務も手伝わなきゃいかん、という訳だ。ところでお前さん、今日は泊まる所はあるのか?宇宙港から直接来たんだろう?」
「誰にも内密で、という事でしたからね。エリカにも知らせてませんし」
「じゃあ、今日はウチに泊まれ。皆を呼んで一
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