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戦国異伝供書
第八十九話 初陣での大手柄その八

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「頼むぞ」
「さすれば」
 志道も応えた、そしてだった。
 元就の婚姻の話が進められた、相手は吉川家の主である吉川国常の娘であった。毛利家と吉川家の結びつきを強める婚姻だった。
 その妻を見てだった、元就は家臣達に笑って言った。
「何かな」
「何か?」
「何かといいますと」
「顔立ちが整っているだけではなく」 
 こう彼等に言うのだった。
「聡明でかつ心に確かなものを持っている」
「そうした方ですか」
「奥方様は」
「そう思われますか」
「人は目を見ればわかる」
 元就は書で学びかつこれまで見たことも話した。
「邪な者の目は濁っており確かな者の目は澄んでおる」
「では、ですか」
「奥方様はですか」
「目が澄んでおられる」
「そうなのですか」
「左様、だからな」
 それでというのだ。
「よいと思った、わしはこれから奥と共に生き」
「そして、ですか」
「そのうえで、ですか」
「毛利家を支えられますか」
「その様にされますか」
「是非な、そしてな」
 それでというのだ。
「毛利家を大きくしていこう」
「わかり申した」
「それではですな」
「奥方様を迎えられたので」
「これからは尚更」
「家を支えたい、だからな」
 それでと言うのだった。
「二人でやっていく、しかし」
「はい、どうもです」
 ここで桂が言ってきた、それも曇った顔で。
「近頃幸松丸様がです」
「お身体がな」
「床に臥せられることが多く」
 それでというのだ。
「医師にも見せ祈祷もしていますが」
「それでもじゃな」
「どうも」
「人の運命はわからぬ」
 元就は苦い顔で述べた。
「特に子、十五まではな」
「何時どうなるかわかりませぬ」
「今日元気だった子が明日死んでおる」
「常ですな」
「とりわけ七つまでは神世の子じゃ」
 この世の子ではなく、というのだ。
「そうであるからな」
「幸松丸様も」
「何とかじゃ」
 心からだ、元就は言った。
「ここはな」
「お命をですな」
「助けて頂こう」
「さすれば」
「医師を常に傍に置き」 
 元就はさらに話した。
「薬を用意してな、祈祷師もな」
「祈祷を頼み」
「そうしてですな」
「殿を何とかお助けする」
「そうしますな」
「そうせよ、義母上も願って下さっている」
 元就は義母のことも話した。
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