第28節「消えた陽だまり」
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で口を開いたのはナスターシャだった。
「マムッ!?」
「それが偽りのフィーネではなく、マリア・カデンツァヴナ・イヴの選択なのですね……」
「……」
マリアは答えない。
それは、未だに迷い続けている証拠だ。
ツェルトに放った言葉が、彼女の本心ではないことの証だ。
「そんな正義、俺はまっぴら──」
「くッ、ごほ、ごほ……ッ!」
反論を続けようとするツェルトだったが、そこでナスターシャが咳き込む。
持病の発作だ。前よりも鎮静化している期間が縮んできている気がする。
「マムッ!」
「大丈夫デスか?」
「後のことは僕に任せて。ナスターシャはゆっくり静養して下さい」
そう言って、ウェルは会議室を後にする。
これで組織の実権は、実質ウェルが掌握したと言ってもいい。
「さて、計画の軌道修正に忙しくなりそうだ。“来客”の対応もありますからねぇ……」
「くッ……」
ウェルが出ていった自動扉を睨みながら、ツェルトは舌打ちした。
(まずい流れだな……。クソッ、あの野郎……地味にキツい当てつけしていきやがって……)
これで二課への投降は絶たれてしまった。
F資料がなくなっているのがバレるのも、時間の問題だろう。
(でもな……誰が何と言おうが、俺は俺の信念を曲げたりしねぇ。たとえマリィに否定されたとしても、俺は……マリィの“ヒーロー”であり続けるって決めてんだ……)
自分の部屋に戻った彼は、机の中に仕舞った一冊のコミック本を握り締める。
夢の原点となった隻腕の超人兵士を始め、憧れの英雄たちの背中を思い描き、瞳を閉じる。
(ウィンター・ソルジャー……。キャップ、ファルコン、アイアンマン、スパイディ……。俺の、憧れのヒーロー達よ。どうか、俺に力を貸してくれ……)
意を決して彼は、その胸に悪への報復を誓う。
全ては、愛する者達を守り、認め合った友と手を取り合って世界を救うために……。
その頃、エアキャリア内の格納庫にて。
以前はネフィリム用だったその檻の中で蹲る少女は、寂し気に呟いた。
「響……」
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