第28節「消えた陽だまり」
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は10年を待たずに訪れる月の落下より、一つでも多くの命を救いたいという私達の崇高な理念を──米国政府に売ろうとしたのですよ」
ウェルの言葉に、調と切歌は信じられないという風で、ナスターシャ教授を見る。
「──マム?」
「本当なのデスか……?」
「……」
ナスターシャ教授は何も答えない。
それをいいことに、ウェルは更にまくしたてる。
「それだけではありません。マリアを器にフィーネの魂が宿ったというのも、とんだデタラメ。ナスターシャとマリアが仕組んだ狂言芝居……」
「……ごめん……2人とも、ごめん……」
俯いたまま、調と切歌に謝るマリア。
そして彼女は、ツェルトの方を見る。
「ツェルトは、気付いていたのよね……。なのに付き合わせちゃって、ごめん……」
「謝ることはない……。マリィの決意を尊重したかっただけだ……」
「マリアがフィーネでないとしたら、じゃあ──ッ!」
その言葉が、切歌に決定的な確信を与えてしまったことを、この場に居る誰もが知らない。
ウェルは畳みかけるように、ナスターシャ教授を非難し続ける。
「僕を計画に加担させるためとはいえ、あなたたちまで巻き込んだこの裏切りはあんまりだと思いませんか? せっかく手に入れたネフィリムの心臓も無駄になるところでしたよ」
「マム、マリア……ドクターの言っていることなんて嘘デスよね?」
切歌はまだ受け入れられないらしく、再度その真偽を聞き返す。
「本当よ。私がフィーネでないことも。人類救済計画を、一時棚上げにしようとしたこともね……」
「そんな……」
しかし、事実は変わらない。
誰より信じ続けてきたナスターシャが、理想を諦め、自分達に内緒で組織を終わらせようとしていた事に、調も切歌もショックを隠せない。
「マムはフロンティアに関する情報を米国政府に供与して協力を仰ごうとしたの」
「だって米国政府とその経営者たちは自分たちだけが助かろうとしてるって……」
「それに、切り捨てられる人たちを少しでも守るため、世界に敵対してきたはずデス……ッ!」
「あのまま講和が結ばれてしまえば、私たちの優位性は失われてしまう。だからあなたは、あの場にノイズを召喚し、会議の場を踏みにじってみせた」
言いたいことはあるものの、ウェルの言葉はどれも偽りのない事実だ。
ナスターシャはただ静かに、ウェルの言葉の裏に隠れる私欲を突こうとする。
「ふッ。嫌だなぁ……悪辣な米国の連中から、あなたを守ってみせたというのにッ! このソロモンの杖でッ!」
杖の先端をナスターシャへと向け、ウェルは狂気を孕んだ笑みを見せる。
「や、やるデスか……ッ!」
「マムを傷つけることは──」
思わず構える装者達。だが……。
「……やめ
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