第28節「消えた陽だまり」
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漢を見せたんだ」
「でも、小日向さんは……」
「……確か、恭一郎が落ちた時、小日向さんはあそこから手を伸ばしていたんだよね?」
「ああ……」
純の質問に頷くと、純は顎に手を当てて考え込む。
「だとしたら……小日向さん、まだ無事でいる可能性があるぞ?」
「え……それは本当かい!?」
純の一言に恭一郎は思わず彼に詰め寄った。
「小日向さんの位置的に考えて、爆風で落下してくる可能性は低くない筈なんだ。でも、小日向さんは落ちてこなかった。だとすれば……」
「立花さんにも伝えなきゃ……ッ!」
自分と同じくらい、いや、それ以上に落ち込んでいるであろう響の元へと走ろうとして、恭一郎はふと立ち止まる。
「……そういや、翔は?」
「ああ、なんでも司令達に報告があるって。どっから持ってきたのか分からないけど、何かのファイルを持っていたような……」
ff
「っ!!」
エアキャリア内、作戦会議室。
やり場のない怒りに、マリアは力任せに窓を殴りつけた。
「この手は、血に汚れて──セレナ、私にはもう……うわああああ……ッ!」
米兵に向けてガングニールを振るった瞬間を思い出し、慟哭するマリア。
ツェルトはマリアの肩に手を置く。
「落ち着けマリィ。撤退前に確認したが、死人は一人も出ていなかったッ! 君は誰も殺してなんか──ッ!」
「それでもッ! この強大な力を、私自身の意志の元で誰かにぶつけ、傷つけた事実に変わりはないッ!」
「ッ! それは……」
人を殺めたのでは、という意識ではない。
自分の手で彼らを傷つけ、その手を血に染めた事自体が、彼女の自責の根底だ。
「これまで私の代わりに矢面に立とうと、その鋼の腕で私を守ってくれたあなたには、謝っても謝りきれないわ……。誰も傷つけずに世界を救おうだなんて甘い考えじゃ、何も守れない……。分かっていた筈なのに、どうしてもっと早く──」
「馬鹿を言うなッ! だからって、自分から積極的に他人を傷つけに行く者に、正義なんてあるもんかッ!」
「現実はそう甘くないのッ! これは訓練でもリハーサルでも、コミックや映画でもないのよッ!」
「……ッ、マリィ……」
鬼気迫る表情でまくし立てられ、ツェルトは何も言えなくなってしまう。
「もう、迷わない。この手を血に汚すことを、決して……躊躇わない──ッ!」
自分に言い聞かせるように、そう宣言するマリア。
調は、予備の車椅子に腰を下ろしたナスターシャ教授に問いかける。
「教えて、マム。いったい何が……?」
「……それは」
「それは僕からお話しましょう」
「ッ!」
ナスターシャ教授の言葉を遮って入室してきたのは、やけに気分のよさそうなウェルだった。
「ナスターシャ
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