第27節「繋ぐ手と手…戸惑うわたしのため…」
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「響ッ!」
翔の集中が一瞬、立花さんの方へと逸れる。
それは翔の手の力を緩ませるのに十分で……さっき瓦礫を除けたのもあって限界だった僕の手は、遂に床を放してしまった。
「響ぃぃぃぃぃッ! 加賀美くーーーーーんッ!」
「くッ……やむを得んッ!」
どんどん遠くなっていく、二人の顔。
遠ざかっていく、小日向さんの悲鳴。
このまま落ちていくのかと思ったその時……僕の耳に、唄が聞こえてきた。
「──Balwisyall Nescell gungnir tron──」
「──Toryufrce Ikuyumiya haiya tron──」
頭上から、灰色の流星が迫る。
僕に向かって手を伸ばすそれは、紛れもなく……頼りになる親友、風鳴翔だ。
「掴まれ恭一郎ぉぉぉぉッ!」
「翔……着地任せたッ!」
背中から伸びる翼で加速しながら、翔は手を伸ばしてくる。
僕は迷わず、その手を掴んだ。
翔は掴んだ手を引き寄せ、僕をお姫様抱っこしながら着地姿勢を取る。
落下から二十秒ほどだっただろうか。
翔と立花さんがスカイタワー下へと着地し、衝撃で地面が半径10メートル近く沈下する。
二人は両脚のアーマーから排熱すると、立ち上がって頭上を見上げる。
「──未来、今行くッ!」
「待ってろ恭一郎、小日向は必ずッ!」
翔が僕を地面に降ろした、その直後……展望デッキが爆発した。
「──ッ!」
「な……ッ!」
「そんな……ッ!?」
煙が上がっているのは、丁度僕達が落ちてきたところだ。
そして更に、同じ場所が再び爆発する。
「そんな……小日向さん……小日向さあああんッ!!」
「嘘だろ……小日向……ッ!」
「未来ーーー……ッ!!」
僕は……小日向さんを、守れなかった……のか……?
信じがたい、しかし事実として目の前に立ちはだかる現実に膝を屈し、崩れ落ちる僕。
その隣で、立花さんの絶叫が虚しく空へと吸い込まれていった。
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