第27節「繋ぐ手と手…戸惑うわたしのため…」
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(リンカーネイション……。もしも、アタシにフィーネの魂が宿っているのなら、アタシの魂は消えてしまうのデスか?)
エアキャリアを隠した森の中。
切歌は木の下で体育座りしながら、不安に怯えていた。
(ちょっと待つのデス? アタシがフィーネの魂の器だとすると、マリアがフィーネというのは……)
「切ちゃん」
マリアの嘘に気付いたその直後、調に名前を呼ばれて顔を上げる。
白エプロンを着た調は、切歌の方へと駆け寄ると、昼食が出来たことを伝える。
「ご飯の支度できたよ」
「あ、ありがとデス。何を作ってくれたデスか?」
「298円」
「ごちそうデース!」
「更に、ツェルトが貰ってきてくれた諸々で作ってくれた余り物チャーハンも付きます」
「おほ〜! ごちそうにごちそうデース!」
懐が厳しく、買い出しも頻繁に行ける立場ではない彼女達にとっては簡易麺の大手、日荻の『王麺』(298円)が文字通りのご馳走なのである。
お陰でツェルトは、食べ盛りの少女達の栄養が偏らないようにと商店街にコネを作ったのであるが、それが彼女達の胃袋をどれだけ喜ばせているのかは言うまでもない。
「ドクターは何かの任務? 見当たらないけれど……」
「知らないデス。気にもならないデス。あいつの顔を見ないうちにさっさとご飯にしちゃうデスよ」
不安はある。だが、調に心配はかけられない。
何より切歌は無類の食いしん坊、もといごちそうハンターである。
待っているご馳走の元へ、彼女は先程までの暗くて不穏な雰囲気を吹き飛ばすほどの笑顔で駆けだしていった。
噂のドクターが今、何処で何をしているのか……。
対して好きでもない変態科学者そっちのけでカップ麺を啜る二人は、考えも及ばなかった。
ff
「誰も彼もが、好き勝手な事ばかり──」
スカイタワー周辺のビル内にあるカフェの一角。
顔を向ければタワーを望む窓際の席に座り、砂糖とミルクをたっぷり入れたティーのカップを傾ける。
まったく……英雄になれると聞いて飛びついてみれば、とんだ詐欺でしたよ。
自分達こそが勝ち組であると言い張る根拠だったフィーネの存在は嘘っぱちの猿芝居。メンバーはあのオバハンを含み、揃いにそろって甘ちゃんばかり。
世界を救うなんて大口叩いてる割には、立ちはだかる追手さえ殺すのを躊躇する。
ハッキリ言ってしまえば、この組織は既に瓦解寸前だ。
全員の心がバラバラになりつつある。まともに動けるはずがない。
ならば……その迷える子羊達を、誰かが導いてあげなくては。
人の上に立ち、世界の命運を握るに相応しい者。英雄になるべき者こそが、事を起こさなくてはならない。
そう……今こそこの僕、ジョン・ウェイン・ウェルキンゲト
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