ギターケースの少女
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ています」
聞く機会をなかなか得られなかった少女の名前が、ようやく聞こえた。
衛藤可奈美か、と意識しながら、ハルトは味噌汁を一気に飲み干す。
知久の隣に座ったまどかは、手を組み、尋ねた。
「ねえ、可奈美ちゃん。可奈美ちゃんって、私と同じくらいの年だよね? 学校とかは?」
「うーん……色々事情があって、今は休学してるんです」
「休学?」
詢子が首を傾げる。
「中学生なのに、休学ってどういうこと?」
「うーん。行方不明の大切な人を探していて、その手がかりが多分見滝原にあるんです」
「見滝原に?」
鹿目一家が目を丸くした。
可奈美は少し気まずそうに、
「はい。あの、あまり詳しくは言えないんですけど」
「そうなんだ……ギターを持っているってことは、その人は音楽仲間ってことかい?」
知久は可奈美の足元のギターケースを見下ろした。
鹿目宅に来てから、肌身離さずギターケースを手元に置く可奈美だ。ハルトもずっとそれが気になっていた。
可奈美はギターケースを胸に寄せ、頷いた。
「うん。これがきっと、その人と再会させてくれるから……」
抱き寄せる彼女は、ただの物への執着には見えなかった。
「二人とも」
今度は、知久が口を開く。
「旅をしているって、どこで寝ているの?」
「「え?」」
その言葉に、ハルトと、少女可奈美は目を合わせる。可奈美が手で「どうぞ」と差し出したので、ハルトは「コホン」と咳払いをする。
「まあ、基本は野宿です。公園で寝るのが理想ですね」
「私も、いつもはホームレス中学生です」
すると、家族三人の目が点になった。
口々に「十代でそんなに……」「最近の若い人の苦労はエキセントリックだね」「ごめんなさい。もっと私が早く気付いていれば」と口にしていた。
ハルトは慌てて、
「ああ、でも慣れていますし。場合によってはバイトとかして日銭を稼いだりしてますよ。今の所持金は十円しかないけど。えっと……可奈美ちゃんは?」
「私はまだ旅始めてから半年くらいですけど。どうしてもっていうときは、年齢詐称でバイトしてます。家出少女扱いですけど」
「……まどかちゃん。一番エキセントリックなのは可奈美ちゃんだと思うよ」
「どっちもどっちですよ!」
まどかが白目で机を叩いた。
「うーん……ハルトさんへのお礼って、改めて考えるとお手伝いよりも住む場所探しの方が重要なんじゃ」
「そんなことない。旅も慣れれば楽しいよ。ね、可奈美ちゃん」
「うーん……私はどっちでもないかな?」
可奈美は手を顎に当てながら答えた。
「前はその人と一緒に回っていたから結構楽しかったけど、今は一人だからちょっと寂しいかな……」
「前
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